今年の国内『VALORANT』競技シーンは、ZETA DIVISIONの世界3位から「Masters Tokyo」の開催決定まで、激動の一年でした。そんななか、一人のキャスターもまた、新たな一歩を踏み出したのです。
それが、ゲームキャスターのyueさんです。
yueさんは『Counter-Strike』シリーズに始まり、『VALORANT』のリリース当時から実況・解説として活躍を見せ、競技シーン「VALORANT Champions Tour(VCT)」の公式キャスターとしてコミュニティではお馴染みの存在となりました。
また、「第3回 Crazy Raccoon Cup VALORANT」にプレイヤーとして参加し、大事な戦いで裏画面に行ってしまいラウンドを落とすほか、リプレイ映像を「さっきも見た場面だ!」と実況してしまうなど、お茶目なキャラクター性を確立しています。
そんなyueさんは11月、新卒から勤めた会社を退職し、キャスター業に専念することを決意したのです。「Riot Games ONE」の宿泊先からの配信でスマホを浴槽に落とすなど、常に楽しい話題を提供し続けるyueさんは、今後どのように活動していきたいのか、ヴァンダルとファントム、結局どちらなのか、気になりすぎて夜も眠れない編集部はyueさんにインタビューを実施しました。
――一年間の集大成ともいえる「Riot Games ONE」はいかがでしたか?
yueさん:この2日間通して、1日目はストリーマー、2日目はプロゲーマーに集まっていただいて、まさにこのイベントの趣旨である「2022年の締めくくり」というものにふさわしく、素晴らしい内容だったと思います。なんといっても「Masters Tokyo」というクリスマスプレゼントにすべて持っていかれましたね!
――さまざまな海外チームも来日していましたが、特に印象に残った方などはいましたか?
yueさん:僕はChronicle選手(Fnatic)がイチ押しで配信なども追っているので、実際にお会いした感動がとても強かったですね。カタコトの英語ですが、多少でも気持ちをお伝えできて、一緒に写真撮っていただいたりとかもして。僕にとっても思い出に残る一日になりました。
キャスター業と仕事の両立に悩む一年
――yueさんとしては、会社を退職されたことが大きなニュースかと思いますが、今年一年を振り返っていかがでしたか?
yueさん:今年に入ってからVCT以外に『VALORANT』のお仕事を頂くことが増えました。その一方で、やはり仕事とキャスターの両立が難しく、悩む一年だったんです。仕事を辞めることは今年のはじめから悩んでいて、先行きの不安もあり、たくさんの人に相談し、ようやく上司に伝えることができました。自分の中では大きな転換点であるとともに、これからも頑張らなきゃいけないな、と思いを新たにしています。
――やはりキャスター業とお仕事の両立は大変だったのですね。
yueさん:「Masters」などの世界大会では、日本時間深夜に出演をして、そのまま寝ずに仕事に行って、時には仕事が終わったら数時間だけ寝て出演をすることもありました。
ただ出演するだけであれば可能ですが、やはり知識不足を感じてしまうことが多く、世界大会を実況するのに、試合を追えていないという、あってはならないこともありました。仕事にもキャスターにも振り切れないモヤモヤを抱えていたんです。
――改めて、今後キャスターとしてどのように成長していきたいと考えていますか?
yueさん:僕は、EMEA圏のメタや立ち回り、エージェント構成、アビリティーの使い方にレベルの高さを感じているので、特にEMEA圏の試合は追えるだけ追って、今のプロ選手に知識で追いつけるようにしたいですね。
また、OooDaさん、岸さん、yukishiroさんに比べて、キャスター面での実力は数段劣っているとも感じるので、そこも時間の許す限りは成長していきたいです。ただやはり収入面もあるので、配信もしっかりやっていきたいですね。そういう意味で、来年は配信で海外の試合の振り返りなどをやっていきたいと思っています。
――ストリーマーとしてもしっかりやっていきたいと。
yueさん:自分では自分のことをストリーマーだとはあまり思っていません。他の方からストリーマーだと揶揄されることも多いですが、やはりストリーマーさんは毎日配信を欠かさなかったりとか、僕がストリーマーと名乗ることが恥ずかしいくらい、彼らの努力を知っているので。あくまで僕はキャスターが本業です。
――記事では「キャスターのyueさん」と書くようにします。
yueさん:そうですね、それで(笑)まだ配信も全然できていないので。
――他のキャスターの方と比べて、どのような点を伸ばしていきたいと感じていますか?
yueさん:やはり実況の言葉遣いや咄嗟の対応など、指摘される部分も多いです。今日も「ここ違ったな」と思うこともありました。他の方の実況を聞いていると、なんというか、個性っていうんでしょうか、個性を出しつつ面白く、けど真面目な部分があるんです。
――エンタメでもある、というところですね。
yueさん:そうなんですよね。僕の自己評価としては、他の人がやってもできるレベルだと思っています。来年からは出演の機会が増えるという話もあり、キャスターも増えるなか、このままではどんどん下に下がっていっちゃうなと感じます。
今は実況・解説どちらもやっていますが、今後はより解説のほうに力を入れていきたいと思っています。まだ国内だと解説できる人は少なかったり、試合の細かい部分を伝え切れていないこともあると思うので、さらにしっかり伝えていけるように頑張りたいと思います。
――実際にお仕事を辞めてから2ヶ月ほど経ちましたが、どのような変化がありましたか?
yueさん:ありがたいことに、年末にかけてイベントが増え、いやらしい話ですが収入面で問題ありません。十分睡眠時間が取れるようになり、まだ本腰を入れているわけではないので、これから頑張らなきゃなと思っています。
世界の壁のさらに奥へ
――今年一番印象に残っていることを教えてください。
yueさん:やはりZETA DIVISIONの世界3位です。5v5のFPSをプレイヤーとして昔からやっていたので、昔から親交のある方が海外で活躍しているのはうれしいです。アジアの中で勝つことすら難しい時代から考えると、海外に勝っているという事実、名門チームであるNinjas In PyjamasやTeam Liquidに勝っているという事実に感動しました。
『CSO』では、日本のチームが海外に行くと、0-16とかでボッコボコにされて、なんならナイフとか出されるほど、言ってしまえば舐められていたんです。『CS:GO』になって少し勝ちが拾える場面も出てきましたが、やはり韓国・中国が強かったんです。でも韓国・中国も世界大会に行くと倒されてしまう、という圧倒的な力の差がありました。
心のどこかで「世界」を諦めているかけているところもあって、まずは「アジア1位」を目標に掲げている選手もいました、でも、今回ZETAはアジアを突破してEMEA圏は世界の壁のさらに奥にいるチームに勝利したという事実が、その一勝一勝が衝撃的で、本当に感動しました。
――ところで、結局ファントムなんですか、ヴァンダルなんですか?
yueさん:ここ最近ヴァンダルだなと思っていたんですが、つい先日の配信で「ファントムありかな」みたいな。というのもCRカップでフラクチャーでファントムを使ったクラッチプレイがあって、「ファントムいけるかな」と。でも今日、Chronicle選手を見ていたら「ヴァンダル使ってるし...」とすごい揺れ動いています。
ちょっとこの結論は2023年中に出したいなと。
――なるほど、来年に結論が出るんですね。
yueさん:それはちょっと言葉を濁しておきます(笑)
――yueさんといえば課金だと思うんですが、今後も続けていくんですか?
yueさん:僕自身、純粋に『VALORANT』が好きという気持ちがとても強いので、キャスターである前にいちプレイヤーとして、ここまで来たらもう止められません。半分義務な気持ちもありつつ「自分にしかできないことなんじゃないか」と思います。二度と手に入らないものも多いので、続けていきます。
――楽しみにしています。最後に読者へのメッセージをお願いします。
yueさん:今年は僕にとっても変化の年でもあり、『VALORANT』プレイヤーの皆さんにとっても衝撃的な一年だったと思います。今回の「Riot Games ONE」では「Masters Tokyo」が発表されました。今年もそうでしたが、来年もまた『VALORANT』の飛躍の年になっていくと思うので、その盛り上がりの波に僕も力添えできるように精一杯頑張っていくので、是非よろしくお願いいたします。
――ありがとうございました!
リプレイ実況、CRカップへの出場、そこで裏画面に行くほか、すべてのスキンを買いあさるなど、どこを切り取っても面白いyueさんですが、ZETAの世界3位を語るその目は熱く燃えていることがとても印象に残るインタビューでした。
来年は「Challengers」だけでなく「インターナショナルリーグ」の新設により試合数の増加や、「Masters Tokyo」の開催など、yueさんがキャスターとして活躍する場面も多くなるでしょう。弊誌としても、今後のyueさんを応援するとともに、その動向をしっかりと追っていきたいと考えています。
そして、ムキムキのyueさんを楽しみにしています。