「インテルのCPUの世代の進化はとんでもない」…22/7の新作MV「僕は今夜、出て行く」を手掛けるバルスに訊く、映像制作に求められるPCとは?

声優アイドル「22/7(ナナブンノニジュウニ)」の新曲「僕は今夜、出て行く」。宮瀬玲奈さんの卒業シングルとなる本楽曲のMVを手掛けているバルスより、制作スタッフのおふたりにインタビューしました。その制作の裏側には、とある実験的な機材導入がありました。

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「インテルのCPUの世代の進化はとんでもない」…22/7の新作MV「僕は今夜、出て行く」を手掛けるバルスに訊く、映像制作に求められるPCとは?
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リアルとバーチャルが織り交ざる声優アイドル「22/7(ナナブンノニジュウニ」は、メンバーの宮瀬玲奈さんの卒業シングルとなる「僕は今夜、出て行く」をリリースしました。

「何かを始めなきゃ 何も終われないと思う。

 この退屈な日常にけりを付けたいなら

 君はまず、このドアを開けてみるしかないんだ」


この楽曲で紡がれるのは、新たな旅立ちへの決意。MVでは総勢14人のメンバーが広大な草原で、静かに……しかし力強く自らを表現する様子が描かれます。その映像を手掛けたのは、昨年末にもバースデーライブ「22/7 CHARACTER LIVE -6th BIRTHDAY PARTY 2022-」も制作を支えたバルス株式会社です。22/7のアイドルたち全員をリアルタイムキャプチャできるスタジオを備え、このほかにも数々の3DCGコンテンツの裏側で活躍してきました。

さてそんな同社ですが、今回のMV制作にあたっては“実験的”な機材導入がありました。インテル株式会社のサポートを通して、制作パフォーマンスが向上したというのです。そこで制作チームのテクニカルディレクターとMVディレクターへ、その内容を伺いました。

◆インタビュイーの自己紹介

江口真彦:テクニカルディレクターの江口と申します。一口にテクニカルディレクターと言っても、会社によって立ち位置が違いますが、弊社の場合はエンジニアやCGアーティストなど色んな専門家がチームにいるなかで、それぞれが担っている技術を繋ぐポジションを指します。エンジニアとディレクターが同じ言葉でコミュニケーションが取れるように間を取り持ったり、R&Dに取り組む場合は、その進め方を策定したりなどを担当しています。

深山詠美:バルスではMVディレクターとして映像制作を担当している深山詠美と申します。もともと実写のコンテンツを作っていたこともあり、今回のような3DCGに留まらず、幅広く制作を手掛けています。

◆バルスは映像制作の専門家集団

――まずはバルスがどういう事業を手掛けているのか、簡単にご説明をいただけますか?

江口:大きく分けてライブ制作と、SPWNというライブエンタメプラットフォームの運営のふたつに分かれます。我々が担当している前者は、モーションキャプチャーの知見と技術を活かして、映像やイベント体験の場を提供しています。例えばVTuberさんの特別な日を彩るイベントライブや、IPホルダーさんの3DCGコンテンツなどの制作サポートですね。

――3DCGコンテンツ制作において、御社ならではの強みについて教えてください。

江口:まず一番は、幅15m/奥行5mという大型のライブ会場のステージをそのまま再現できるような、大きなモーションキャプチャースタジオを備えている点ですね。それが今回のような同時に14人が踊れる収録を可能にしています。

それと社内にディレクターからCGアーティスト、映像クリエイター、サウンドクリエイターまで所属しており、コンテンツを1から10まで内製できる仕組みがある点ですね。企画提案から仕上げまで、各工程の専門家と相談・連携しながらコンテンツを作り上げます。最近の強みは、バラエティ企画に強いディレクターが集まっていることでしょうか(笑)

江口:地上波番組であれば、 日本テレビさんの「MUSIC VERSE」でも3DCG技術のサポートをしています。あとは 自社IP「MonsterZ MATE」の5thライブをはじめ、これから開催される色々なライブイベントの準備を進めています。

――そんななか、どういった経緯で22/7のコンテンツ制作を手掛けられることになったのでしょうか?昨年末は「22/7 CHARACTER LIVE -6th BIRTHDAY PARTY 2022-」も担当されていたかと思います。

江口:22/7さんがご出演された2021年夏の「バーチャルTIF」の制作を弊社が手掛けていたことから、お声掛けいただいたのだと思います。それが一昨年の「22/7 5th BIRTHDAY LIVE 2021~Colors of Flowers~」の制作に繋がりました。その当時のメンバーは9名だったのですが、メンバーチェンジを経て14名になったのが昨年末のライブですね。

運営会社のバズウェーブ合同会社さんは、普段から様々な実写ライブを手掛けられているので、「こういうライブにしたい!」という具体的なイメージをお持ちでした。それを形にすべく、今回を含めて取り組んできました。

――今回手掛けられた新曲「僕は今夜、出て行く」のMVに関して、ディレクターを務めた深山さんが考える見どころを教えてください。

深山:今回のMVには「草原」というひとつの舞台しか登場しません。そのなかで時間が流れることで、だんだんと空が明るく染まっていく。曲名の通り、MVは夜の場面から始まるのですが、最終的には希望に溢れた、ピンクに染まった朝日のシーンで終わるというのがポイントですね。立川絢香さんの卒業を含んだ楽曲でもあるので、彼女のテーマカラーに合わせて全体的な色彩を調整しています。

◆インテルからの提供PCで作業パフォーマンスが改善

――やはり、メンバー14名を同時にモーション収録するのは大変ですよね。

江口:そうですね。一番はどうしても遅延が生じてしまう点です。22/7のメンバー皆さんがリアルタイムに音声を聴いてパフォーマンスをされているんですが、キャプチャーされたものが映像として届くまでに遅延があるので、それに合わせた音を出してあげないとリップシンクや表情変化のタイミングがズレてしまうんです。それがどれくらいズレるのかというのは14人で収録をしてみないと分からないこともあり、調整に苦労していますね。

また、広いスタジオとは言いましたが限りはあります。今回のMVは、広がったり密集したり美しいフォーメーションのダンスが展開されますが、密集したときに多くのマーカーが隠れてしまうとモーションの破綻が増えるので、本番中は祈るような気持ちですね(笑)。もちろん、そうならないように事前準備は入念に行っているのですが。

深山:3Dモデルにねじれが起きちゃうのが大変です。

――そんな収録の負担を減らすべく、インテルからPC提供を受けたのですね。

江口:きっかけは昨年末の「22/7 CHARACTER LIVE -6th BIRTHDAY PARTY 2022-」ですね。弊社ではモーション処理用に3台、Unityでの作業用に1台のPCを運用しているのですが、14人がパフォーマンスをするとなるとUnityの方が、いくら表現を削ってもフレームレートが落ちてしまうという厳しい状況になってしまいました。

いよいよ、これ以上の表現を削るのも難しいとなった時に「スペックをあげれば、どうにかなるのでは?」と。弊社代表の林から、Blue Carpet Projectでクリエイターを支援しているインテルさんへ相談させていただいた形です。お借りしたPCのおかげでフレームレートもかなり改善し、表現力も向上しました。

――そのPCは、今回のMV収録でも活用されているのでしょうか?

江口:いえ、それは既に返却しており、Unity用のPCについては新たに購入をしています。ただ今回は、新たにVICON用のマスターPCとサブPCをご提供いただいています。モーション用PCに関しても、同じく13世代インテルCPUのものにすれば、先程お話ししたような遅延も改善するのではないかと考えたんです。

というのも、弊社が採用しているモーションキャプチャシステム「VICON」は、高精度の処理を求めるのでマルチコアプロセッサーに適していないという性質があります。そこで、シングルスレッド性能の高いCPUを採用すればパフォーマンスが出るのではないか?と。

江口:最新CPUはVICONの動作保証が無かったため、事前に検証を行う必要がありましたが、「これなら大丈夫だ」とご提供をいただくに至りました。

――モーションキャプチャに関しては、実際にパフォーマンスが改善したのでしょうか?

江口:VICONでのモーション収録では「ドロップフレーム」という、どれくらいフレームが欠けているのかを数値で見られるのですが、以前はスペック的に無理な運用をしていたこともあり、激しく動くような場面になると瞬間で70%ほど出てしまっていました。それが今は上がっても50%くらいに抑えられています。120Hzで撮っていますので、そのおかげで60Hzでのレンダリングが担保されるようになりました。

また、悩んでいたモーションの遅延についても、演者が動いてからVICONのモーションに適用されるまでが700msから400ms程度に改善されました。

深山:今までだと、リアルタイムレンダリングしているUnityのプレビューは心もとなかったのですが、それがコマ落ちをしなくなりましたね。

旧PC(2022年)

マスターPC(今回の使用PC)

サブPC(今回の使用PC)

CPU

AMD Ryzen™ Threadripper™ 3970X

第13世代インテル® Core™ i9-13900K プロセッサー

第13世代インテル® Core™ i9-13900K プロセッサー

GPU

NVIDIA GeForce RTX™ 3070Ti

NVIDIA GeForce RTX™ 3090

NVIDIA GeForce RTX™ 4090

メモリ

32GB(8GB × 4)

128GB(32GB × 4)

128GB(32GB × 4)

SSD

1TB+500GB

(HDD 4TB×2)

4TB × 2

2TB

OS

Windows10

Windows11

Windows10

――インテルのサポートについてはいかがでしたか?

江口:検証時にOSをWindows11からWindows10へダウングレードした方が安定することが分かると、それをご快諾いただいたり、Windows10のプロダクトキーを別途ご手配いただいたりと、PC提供だけでなくそれが実際に使えるようになるまでフォローをいただけたのは大変助かりました。また希望を出してから即日発送してくれるなどのスピード感も嬉しかったですね。

◆ライブ制作のプロ集団がPCに求めるもの…「CPUの世代の進化はとんでもない」

――日々コンテンツを制作されるなかで、PCに求めるものについて教えてください。

江口:生ライブを制作している我々からすると、“安定していること”ですね。例えば、オーバークロックが施され、瞬間的にとんでもないスペックが出るPCだとしても、ライブを通して動き続けられるものでなければ何も意味はありません。きちんと要求を満たすスペックを備えた上で、安心・安定して動き続けてくれることは重要だと思っています。

深山:Unity上で照明を組んだりアセットを追加したりすることで動作が重くなったり、4Kでの映像編集をしているなか、プレビューが動かなくなるのが一番のストレスなので、スペックは高ければ高いほど嬉しいですね。

――ありがとうございます。最後に江口さんはテクニカルの観点から、深山さんからはコンテンツに関してお言葉をいただけますか?

江口:以前は第10世代インテル® Core™ i9 プロセッサーを使用していて、そこから第13世代に移行したときに、フレームレートが倍近く出るようになりました。グラフィックボードは、まったく同じGeForce RTX™ 3090を採用していたにも関わらずです。それで、CPUの世代の進化はとんでもないなと感じましたね。

PCのスペックについては、過去に「大きな変化はなくなったのかな?」と思う瞬間もあったんですが、改めて今回の検証を通して「こんなに進化したんだ!」と気づかされました。とはいえ高価なので気軽に買い換えづらいかもしれませんが、この記事を通して、少しでも「新しいものを導入してみようかな」と思っていただけると嬉しいです。

深山:今回のMVでは、今までの22/7の3DCGコンテンツでは見られなかったメンバーの表情が見られると思うので、そちらに注目していただきたいです。旅立つ方へ向けて、寄り添いと勇気をもらえる楽曲です。是非視聴してください。


22/7公式サイト:https://nanabunnonijyuuni.com/
バルス株式会社:https://balus.co
インテル® Blue Carpet Project: https://www.intel.co.jp/bluecarpet

《矢尾新之介》
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