「ムラッシュゲーミング」のオーナーであるストリーマーの加藤純一さんは、『VALORANT』部門の選手を決める公開オーディションを開催することを発表。eスポーツとエンターテインメントを両立させています。
◆2024年へ向けたチーム再編
ムラッシュゲーミングは2023年1月に本格始動したeスポーツチームであり、運営は全て加藤純一さんのポケットマネーで行われています。現在は『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』と『VALORANT』2つの部門が活動しています。
そのなかで『VALORANT』部門は、同作の競技シーンである「VALORANT Challengers 2023 Japan」に出場し、「ZETA DIVISION GC」などを倒し予選を突破しました。しかしレギュラーシーズンであるMain Eventへの出場をかけた「Advance Stage」では、プロチーム「IGZIST」と「Focus e-Sports」に対し2連敗。敗退となりました。
そんなチームは2024年へ向けた再編を目指しメンバーを募集。集まったメンバーで公開オーディションをすることで、新メンバーを決定しようという試みが行われているのです。
◆加藤純一にしかできないエンタメとeスポーツの両立
昨今、日本で存在感を増しているeスポーツですが、世界的にみればやや下火になりつつあります。チームへのスポンサー打ち切りや2部リーグの経営不振といったニュースはあとをたたず、高騰する選手との契約金も相まって、チームは苦境に立たされています。
ここからは筆者の考えですが、この打開策として最も有効なことは「エンターテインメント」として成り立たせることです。
よく“選手ファースト”という言葉を耳にしますが(選手を第一に考えるという意味で定義すると)、選手ファーストでお金はなかなか生まれないことが事実です。選手たちを見返りもなしで支えるスポンサーがいるほど、eスポーツに経済効果があるとも思えません(でなければeスポーツの冬などこない)。すると“視聴者ファースト”が最も正解に近い解決策となるのです。
※UPDATE(2023/06/28 10:30):一部言い回しを修正、 "選手ファースト”の定義を明記しました。
例えばZETA DIVISIONやCrazy Raccoonといった人気チームは“強い”だけでなく、選手を“魅せる”ことに注力して功を奏しました。ユニフォームやWebサイト、動画コンテンツなど、あらゆる露出の機会で、選手とチームをブランディングしたのです。
一方のムラッシュゲーミングは、“加藤純一”そのものがコンテンツとなって成り立たせることに成功しています。今のところムラッシュゲーミングの所属メンバーによる収益はないとみられますが、加藤純一さんがムラッシュゲーミング関連で行った放送などを通じて、メンバーやゲームタイトルの存在を知った視聴者は多いでしょう。
加藤純一さんが自身の立場を上手く活用して作り上げたのは「“加藤純一ファースト”を視聴者が楽しむ」という構図。これは人気ストリーマーである彼にしかできないことでしょう。
ムラッシュゲーミングと加藤純一さんが今後どのような展開を見せるのか、日本におけるeスポーツチームの特異な例として注目すべき事項です。