Cygames専属キャスター友田一貴氏に訊いた「eスポーツ実況者は何をすべきなのか」

Cygames専属キャスター友田一貴氏は、現在のeスポーツと実況者の課題をどうみているのでしょうか。

e-Sports インタビュー
Cygames専属キャスター友田一貴氏に訊いた「eスポーツ実況者は何をすべきなのか」
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「プロゲーマーのインタビューは聞き飽きた」

そんな皆さんにこそお届けしたい、ビジネス視点のeスポーツ実況者のインタビューです。

・eスポーツビジネスにおけるeスポーツ実況者の役割
・eスポーツ実況者が生きていくためのビジネス的な観点

Cygames専属キャスター友田一貴氏は、現在のeスポーツと実況者の課題をどうみているのでしょうか。

今回のインタビューは「Shadowverse Invitational 2023(以下、インビテーショナル)」(※1)の開催中に行われました。
※1:「Shadowverse Invitational 2023」とは、2022年度の『シャドウバース』の競技シーンで活躍したプレイヤーが集い、いま国内で最も『シャドウバース』が強い選手を決める大会。

インビテーショナルはシャドバならではのイベント

ーーついにインビテーショナルが開催されました。デジタル版とリアルカードゲーム版の頂点を決める大会という凄いイベントです。率直な感想を教えてください。

友田:『シャドウバース』だからできたイベントだと感じています。6年間かけて築き上げてきたブランドがあったから、デジタル版とリアル版の融合という形で開催できたのだと思います。

他のゲームにもデジタルとリアルが融合したイベントは開催されていますが、リリースされてまだ6年程度の『シャドウバース』でそれを達成できたのは凄いことだと思います。

世界大会に近い熱狂と熱意が伝わってくる。この大会で実況をできることをとても光栄に思います。

ーーたくさんの見所があると思いますが、特にどこに注目していますか?

友田:プロリーグの選手、RAGEで勝ち上がった選手、大学生リーグの優勝チーム、国体で結果を残した選手、あらゆる大会から選手が集まっているという点です。

選手に感情移入して応援しやすく、みんなが応援できる大会です。

大会の種類が多い『シャドウバース』の良さが凝縮された、全てを良いところどりした夢のような大会ですね。

ーーアマチュア選手がプロ選手を倒すという場面も、今回の見所なのでしょうか。

友田:そうですね。しかも1日目はスイスドローという、実力の出やすいルールなので。その中でもアマチュアの方々は活躍していますね。また『シャドウバース』の特徴でもある、アマチュアチームからの参戦もあって、そこが見所かと思います。

※インビテーショナルの模様

eスポーツ業界におけるカードゲームの立ち位置

ーー今回のインビテーショナルのような大会もそうですが、ここ数年、とても個性的で多種多様なeスポーツ大会が開催されてきた印象があります。最近のeスポーツ業界についてはどのような所感をお持ちでしょうか?

友田:全盛期に比べると落ち着いてきた印象があります。特にここ数年はオフラインイベントがやりづらかったので、オンライン開催の内容を試行錯誤をする時期が続きましたね。

以前まで一緒に盛り上げてくださった企業さんも離れていったりして、ちょっとさみしいと思いつつも、eスポーツ業界全体の数字としては悪くないのでポテンシャルは感じますよね。

あとここ最近は業界全体を通して、配信の見せ方がどんどん上手くなっている印象があります。特にゲーム好きの方々の有志で開催されている、非公式のeスポーツイベントのクオリティが上がってきていて、公式大会だけでなく、ゲーム好きなファンたちの作る大会が熱を帯びてきているので、そういう点にeスポーツ全体の盛り上がりを再確認しましたね。

ーーその中でカードゲームの立ち位置についてはいかがでしょうか。eスポーツの中で特に人気なのはFPSでしょうか。

友田:FPSは見た目の分かりやすさもあって人気ですね。カードゲームは(見る側にも)専門知識が必要なので、(大衆化という観点では)囲碁や将棋をはじめとしたマインドゲームの域を超えるのは難しいのかもしれません。

とはいえ、最近はカードゲームに親しみが無い層にも届くような工夫もされているので、カードゲームも他のeスポーツに負けていないと思いますね。

一方、カードゲーム界隈の実況と解説については、まだまだ課題が多いと感じています。カードゲームは盛り上げるのが難しいジャンルであり、他のアクションゲームと比べると、実況に必要な知識が多いので大変です。

僕は『シャドウバース』に専念しているので問題なくやれていますが、様々なゲームの実況仕事を引き受けているキャスターさんにとって、カードゲームの実況は手を出しづらいものでしょう。最低限の実況をするために費やさなければならない時間と労力が、他ゲームと比べて高いんです。あとカードゲームは画面に動きが少ないので、場を持たせるトークをするという点でもかなりの知識量が必要です。

ーーお話を伺っていると、カードゲームにおける実況者と解説者は責任重大に思えました。実況者の腕前が、配信の面白さに直結してしまう…

友田:「よくわからないけど、なんかすごい!」と感じさせるのが、良い実況だと思うんです。分かりやすさを追求していくのが、カードゲームの実況には特に必要です。大変ですがやりがいはあるので、キャスターに挑戦してくれる人がもっと増えてほしいと思いますね。

eスポーツキャスターは「本田圭佑」から学ぶことが多い

ーーeスポーツがビジネスとして大衆化できるかどうかは、eスポーツキャスターの腕にかかっている気がしてきました。これからのeスポーツキャスターには何が必要なのでしょうか。

友田:実況者も解説者もパッションが必要だと思っています。

(選手やゲームに対して)愛を感じる実況&解説ができるかどうかであったり、単純に本人たちが楽しんでいるかどうかが重要。

それを再確認したのが、2022年ワールドカップ、本田圭佑さんの解説を見たときです。本田さんの解説が視聴者に受け入れられた理由は、語彙力やトーク力ではなく、現役時代から積み上げられたサッカーの知識とパッションです。

本田さん自身が試合を楽しみながら解説をしていて、言葉の節々からサッカーが好きなのが伝わってくる。その中でさりげなく専門的な解説が入るので、視聴者の耳にスッと入ってくる。このバランスがベストなんだなと思いました。

ーーたしかにワールドカップ中は「#本田の解説」がSNSでは話題でした。

友田:僕は2022年のワールドカップをほぼ全試合見ていて、サッカーファンとしてだけなく、実況者の視点でも見ていたのですが、群を抜いて本田さんの解説は(視聴者に)受け入れられていました。「本田さんの解説」を目的に試合を見ていた人もいたでしょう。

ワールドカップのあと『シャドウバース』のキャスターチーム内で「僕たちも本田さんのような存在になっていきたい」という話を共有しました。「僕らがもっと試合を楽しんでいこう」「僕らが楽しまないと視聴者も楽しめない」「事実を伝える実況だけをしても、視聴者に感動を与えることはできない」という話をするようになりました。

ーー試合を楽しめる実況者になるには、どういった努力をすべきなのでしょうか?

友田:ゲームを理解することだと思います。

そのゲームの楽しいポイントが分かるようになること。楽しいポイントを理解して、僕らが楽しんでいれば「これは面白いシーンなんだ」「これは凄いシーンなんだ」ということが、ゲームをそこまで理解していない視聴者にも伝わる。

カードゲームはeスポーツの中でも比較的、ゲームを理解するのに時間がかかるジャンルなので、楽しむ実況をするまでに訓練が必要にはなると思います。

ーーeスポーツキャスターのレベルが上がってくると、彼らがフィジカルスポーツの実況者として羽ばたいていく未来もありえるのでしょうか。

友田:(一般的なアナウンサーの方々と比較すると)技術では劣る部分があるかもしれませんが、パッションの総量とその伝え方については、eスポーツキャスターも勝負できるようになると思います。

野球やサッカーの知識を持っているeスポーツキャスターがいたら、フィジカルスポーツの実況でも力を発揮できる日が来るかもしれません。eスポーツキャスターとしてどんなに優秀でも、興味のないスポーツの実況をしてはダメでしょう。

ワールドカップで実況を務められた、寺川アナ(テレビ朝日アナウンサー)もサッカーが大好きなのが伝わってきますし、サッカー好きなだけでなく、本田さんと張り合えるぐらい知識が豊富な方です。

サッカー好き&知識も豊富だからこそ、ワールドカップのような大事な試合の実況を任されていて、本田さんからも信頼されている。eスポーツもフィジカルスポーツもその競技を愛しているかどうかが重要なのでしょう。

ーーeスポーツキャスターの可能性についてよく分かりました。ちなみに友田さん自身としては、今後活動の幅を広げていきたいという想いはあるのでしょうか。例えば、他のジャンルの実況もしていくなど。

友田:その選択をするかどうかの分岐点が2019年、Cygames専属になるかどうかの判断でした。専属になった現状はCygamesに尽くそうと考えています。なので、もしCygamesがフィジカルスポーツのコンテンツを作ったら、実況として関わるかもしれません(笑)

とはいえ、実況者として長年『シャドウバース』にお世話になってきたので、『シャドウバース』の実況者として骨を埋めたい気持ちが強いです。なので現状は、フィジカルスポーツは勿論のこと、『シャドウバース』関連以外のゲームについては実況をする気持ちはないですね。

視聴者に嘘をついて実況をしたくない

ーーいちファンとしては、友田さんがAbemaTVでサッカーの実況をするところも見てみたい気がしますが(笑)

友田:僕自身、やれるとは思ってないですね(笑)サッカーは好きではありますが、理解度が高いわけではありません。また、僕よりもサッカーに対する情熱が高い人はたくさんいるでしょう。僕の信念としても(やれるやれないではなく)「友田がやるべきではない」と考えます。

正直、どのようなモノについても実況はできるのだと思います。突然「洗濯機について実況してください」とお願いされたとしても、それが仕事である以上、実況をやり遂げる自信はあります。

ただ、そのモノにかけた情熱や時間というのは、必ず実況に反映されるので「友田は洗濯機のことがそんなに好きじゃない」というのは、すぐに視聴者にバレるでしょう。

視聴者に嘘をついた実況をしたくないという信念があるので、『シャドウバース』と『シャドウバース エボルヴ』の実況は極めていきたいですが、それ以外の活動については控えているのが現状です。

「『シャドウバース』を何十年も続くコンテンツにしたい」というCygamesさんの想いもあるので、その想いを実現させるために尽力したいと考えています。

ーー現在はフロントマンとして活躍されていますが、今後のキャリアとして、後任の育成やマネジメントなどについては、視野に入れてらっしゃいますか?

友田:少しずつそういった活動はさせてもらってまして、キャスターチームとも意見交換の機会を設けさせていただいて、僕自身も意見を共有させてもらっています。

現在、『シャドウバース』のキャスターチームにはプレイヤー出身のキャスターが多く在籍しているので、そういう点では、運営側の方々とは違った視点で意見を出せると考えています。

なので、そういった形でeスポーツ界隈の実況をより良くするために、コンサルティングや後任の育成など、裏方に専念していくというのも魅力的な選択肢だと思っています。

ーー将来的には、友田さんの実況スタイルを継承した実況者が排出される可能性があるということでしょうか?

友田:僕自身、人材の育成には興味があります。僕の知識を共有する形での、実況のレクチャーも始めていて、「シャドバの実況においてはこういう目線が大事」や「最近はこのカードが人気だから、特に愛情を注いでいこう」といった、

実況者としてフロントに立って活動する以外の動きも増やしているのが現状です。

そういった活動はCygamesさんも評価してくれる部分ではあり、これからも貢献していきたいです。

(C) Cygames, Inc.

《Ogawa Shota》
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