バーチャルライバーグループ「にじさんじ」所属の人気VTuber「月ノ美兎」さんが、かつて存在した学校の校歌に「鬼」が含まれているか気になったところ、視聴者によって速攻で特定されたようです。
「鬼ヶ島で死にかけたことある?」と題した動画では、香川県高松市にある「女木島」へ旅する様子が語られています。女木島は高松港の北東4kmに浮かぶ小さな島で、「桃太郎」伝説にちなんで“鬼ヶ島”と呼ばれています。鬼のすみかとされる洞窟など、観光地としても知られており、月ノ美兎さんもそれらを訪れ、見どころ満載で面白かったと話しています。
すると突然、道中のバスで死にかけたというエピソードへ話題は急展開を迎えます。やむを得ず隣同士になってしまったおじさんがちょっとヤバそうな雰囲気だったなどの小話もはさみつつ、乗車したバスが事故りそうだったとのこと。
動画タイトルからして本題が終わったかと思いきや「お話したいことがここからありまして」とどこか神妙な面持ち(?)で、話題はまたも急展開。廃校となった小学校を改装し観光地とした「元女木島小学校」を訪れた際、“ご学友”が「女木島小学校の校歌に“鬼”って入ってるのかな」と話したことをきっかけに、月ノ美兎さん御一行は校歌が気になって仕方なくなってしまったのです。現地の案内所や施設のスタッフへ問い合わせるも、結局のところ不明であり、来訪から今まで眠れない日々を過ごしていたとのこと。
そして、視聴者のなかに女木島小学校の卒業生や元教員などがいないか呼びかけを行いたいという、動画の本当の趣旨を説明しました。月ノ美兎さん同様に、視聴者も校歌が気になって眠れなくなる呪詛を振りまいたとささやかれましたが、YouTubeのコメント欄やSNSではインターネットの隅々を漁ることで、校歌への手がかりを見つけていきます。
まず、件の小学校の正式名称は「高松市立女木小学校」であったことが判明し、そのうえで、高松市図書館が発行する「高松の校歌」なる書物にその校歌が載っているとの情報が寄せられました。この書物は、高松市内の小・中学校等の校歌を楽譜付きで記録したもので、郷土資料として高松市のいくつかの図書館などに保管されています。
そして、インターネット資料収集保存事業(WARP)で国立国会図書館が保存した高松市のホームページに、校歌が載っていることが発見されました。高松市女木島の出来事を綴った、当時の高松市女木出張所、所長である柳信三氏の投稿によると、1872年(明治5年)に女木小学校の前身である「弘文館学校」が創設され、2005年3月に休校扱いとなり、133年に及ぶ歴史に幕を閉じたようです。
月ノ美兎さんが欲してやまなかった歌詞には、女木島から望む「瀬戸の海原」や交通の要所であったことを思わせる「ゆきかう船」といったワードが見られるほか、歴史を語った2番には「鬼ヶ島」という単語が使われています。結果として、「女木島小学校」改め「高松市立女木小学校」の校歌には「鬼」というワードが含まれていたのです。
女木島は、高松駅すぐそばの高松港から1日6往復、夏の繁忙期には12往復のフェリーが就航しています。述べてきた通り、桃太郎伝説の舞台と呼ばれる島で、鬼が住んでいたとされる「鬼ヶ島大洞窟」や、冬の強風から建物を守る独特な石垣「オーテ」など、歴史を感じる観光から、海水浴場やキャンプといったアクティビティまで楽しむことができます。そして、133年の歴史を紡いできた女木小学校は、その一部がアートギャラリーとして公開されています。校歌の3番で歌われる未来を担う新たな役目を持っているのです。詳しくは、「鬼ヶ島観光協会」のホームページを御覧ください。
133年の歴史に幕を下ろした女木小学校が、VTuberの来訪から動画投稿というひょんな形で注目を浴びることとなりました。