台風の影響を受けなかったのはマネージャーの手腕―『VALORANT』SCARZ・TORANECO選手に訊くオフラインへの対策とチームのサポート

アセンショントーナメントへの切符を掴んだSCARZからTORANECO選手にインタビューを実施。前日の台風の影響やオフラインへの対策、JDT戦の感触などを伺いました。

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6月3日・4日に大阪・エディオンアリーナ大阪で行われた「VALORANT Challengers 2023 Japan Split 2」にて、SCARZが優勝。VCT Pacific リーグへの参入を決めるAscension トーナメントへの出場権を手に入れました。

SCARZはSplit 1においてFENNELに対しLower Bracket Finalで敗北しベスト3という結果に終わったものの、Split 2では同じシチュエーションでFENNELにリベンジを達成。翌日のGrand Finalでは、Upper Bracket Finalで一度敗北したチーム「Jadeite(JDT)」に対しマップスコア3-2で勝利。日本一の座に輝きました。

今回、そんな優勝トロフィーを掲げた直後のSCARZからTORANECO選手にインタビューを実施。前日の台風の影響やオフラインへの対策、JDT戦の感触などを伺いました。

◆TORANECO選手の持つプロ意識の高さ

――本題に入る前に、ずっと気になっていたことを質問させてください。TORANECO選手は配信でもメディア向けインタビューでも、受け答えが突出してしっかりしていますが、チーム側から「インタビューの心得」のような指導があったりするんでしょうか。

TORANECO:いえ、全くないです(笑)ただ普段から「こういうことを伝えたいな」や「こういった発言はシーンにとってプラスになるな」ということは考えています。特に忖度しようとかは全く思っていません(笑)

――プロ意識の高さを感じます。他メンバーよりも年上なので気負っているようにも見えてしまいますがいかがですか。

TORANECO:最近はプロプレイヤーの素行に注目が集まっていますし、発言など気をつけなければならない部分はたくさんありますね。あと、オフラインの前にKr1stalとYoshiiiが髪切りに行くことになったんですが、一緒に付き添って美容師さんにオーダーをしたりしました。そういうプレイヤーのサポートも僕としては嫌いではないし、好きでやっているんです。むしろその過程で自分が成長させてもらっていると思うので、感謝しています。

◆「オフラインと完全に同じ環境で練習できた」

――では、試合を終えての率直な感想をお願いします。

TORANECO:ステージでも語った通り、自分にとってこの優勝が何を意味するのかまだわかりません。俯瞰すると、日本リージョンで1番を取れたことは達成感のあることですが、それよりも、20歳前後で覚悟を持って日本に来て数ヶ月プレイしてくれたメンバーたちと一緒に優勝できたことや、ファンの皆さんの愛情、チームのサポートなどの方が、今は大きく感じます。

――試合の前日~当時にかけて、台風の影響による東海道新幹線の運転見合わせなど、交通機関に大きな乱れがありました。SCARZは影響を受けなかったのでしょうか。

TORANECO:本当は前日の夕方に新幹線で大阪に来る予定だったんですが、その日の朝にマネージャーから「これは早くしたほうがいい」という提案があり、移動時間を早めることにしました。その提案がなければベストパフォーマンスで試合に挑めなかったんじゃないかと思います。

――夕方には新幹線が止まっていたので、本当に紙一重でしたね。Day1でFENNELに勝利したあと、決勝に向けてチーム間でどのような話し合いがありましたか?

TORANECO:昨日は終わってすぐにホテルで寝ただけだったので、あまり時間はありませんでした。相手の動きに合わせて動こう、いつも通り動こう、という感じでした。

――BO5フルマップでした。特に2マップ取られたあとの最終マップはプレッシャーがかかったと思います。

TORANECO:体力的には問題なかったんですが、気力ではキツかったですね。勝てたはずのアセントを落としてしまったときは、雰囲気を良くしようと声を掛け合っていました。でもどうあがいても、チームの士気を上げようとする行為は空元気でしかないので、結局5マップ目で勝っていくことがメンタルの安定に繋がりました。チームとして盛り下がらないようにしないと負けちゃうのでは...という厳しいメンタル状況ではありましたね。

――今回チーム側が、オフラインの試合と全く同じ環境を整えてくれたとのことですが、これは文字通り“全く同じ”なんですか。

TORANECO:そうです。本当に全く同じです。10万円くらいするイヤホンや、音響機器、モニターや40~50万ほどのPCなど、全く同じものを用意していただきました。実際にステージでは「同じのだ」と安心感がありましたね。その安心感と、Split 1のオフライン経験があったという僅かな差で、JDTに勝てたんじゃないかとすら思っています。本当にチームには感謝しています。

――Split 1で初めてオフラインで戦った時と今回で、何か違いはありましたか。

TORANECO:めちゃめちゃあります。音に関して、前回は会場が静かなときは実況・解説の声などが多少聞こえてしまうところもありました。ですが今回はそれが全くありませんでした。会場に向けて鳴っている試合の銃声も全く聞こえないくらい音周りはとても良くなっていましたね。RAGEさんが頑張ってくれたんだなと感じました。

――JDTはアセントでセージを外すなど、構成が変化していた部分もありました。これは予想できていましたか?

TORANECO:多少変えてくることはあるだろうと思っていましたが、フラクチャーまで変えてくるとは正直思っていませんでした。でも自分たちとしては、今日の構成のほうが戦いやすかったのかなと思います。

――一度負けた相手との再戦で、難しいところなどはありましたか?

TORANECO:前回の試合から期間が空いていたこともあって、向こうの動きも変わってくると予想していました。対策できないというか、まっさらな状態での戦いでした。その中で、相手がまだオフラインに慣れていないうちにディフェンダーでも前目に戦っていこうだとか、積極的にアタッカーをピックしていこうという対策はありましたね。

――最後に読者へのメッセージとアセンショントーナメントへの意気込みをお願いします。

TORANECO:アセンションに向けて、自分たちがどのようなモチベーションや責任感を持ってやるべきかまだハッキリしていません。これから練習や試合をしていくなかでしっかり答えを作っていければ良いと思います。まずは急がず今まで通り、自分たちの課題に向き合っていけば、結果的に役目を果たせるというか、トーナメントに向き合えるのかなと思います。また、海外のメンバーはまだ日本になれきっているとは言えないので、その部分も含めて引き続きサポート、応援をよろしくお願いします。

――ありがとうございました。 アセンション、期待しています。


TORANECO選手と実際に話していて感じたのは、高いプロ意識です。しっかりとした受け答えや話の広げ方、話す内容も含めプロプレイヤーとしての形はもちろん、他メンバーへの積極的なサポートと応援の呼びかけなど、まるで自分が表に立っていなくてもかまわないといわんばかりの謙虚さを持ち合わせています。

SCARZは6月28日から行われる「VALORANT Challengers Ascension」トーナメントに出場し、Pacific リーグ入りを目指して戦います。3つ目の日本チームの参入に向け、惜しみない応援を送りましょう。

《Okano》
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東京在住ゲームメディアライター。プレイレポート・レビュー・コラム・イベント取材・インタビューなどを中心に、コンソールゲーム・PCゲーム・eスポーツについて書きます。好きなモノは『MGS2』と『BF3』と「Official髭男dism」。嫌いなものは湿気とマッチングアプリ。

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