約7年ぶりの完全新作として6月2日の発売を予定している、PS5/PS4/Xbox Series X|S/Steam向け対戦格闘ゲーム『ストリートファイター6』。本作には1人用のストーリーモードや、必殺技のコマンド入力を撤廃する操作方法が用意されており、これまで格闘ゲームを遊んでこなかった層に対しても大きな力を入れていることが分かっています。
一方、従来の格ゲーで思うようにハマれず、「俺はもう…戦わん…」と心折れた“挫折組”にとって、『ストリートファイター6』はどういった作品なのかというレビューはまだ少ないように思えます。
筆者は『ストII』時代から30年以上、様々な格ゲーを遊び続けてきました。とはいえ決して上手い方ではなく、前作『ストリートファイターV』は発売当初にやりこむもシルバーランクで挫折。数年後に突如モチベが回復し、半ば意地になってグランドマスターまで駆け抜けました。
格ゲーは間違いなく楽しいジャンルです。しかしこれほどムカつき、イライラし、声を荒げたくなるゲームを私は知りません。魅力に気付く前に挫折する方が自然とすら言えます。
ところが先日カプコン社にて製品版に近いデモ版をプレイしたところ、至るところで格ゲーに挫折した方でも楽しく遊べるようにという配慮が感じられました。はたしてどういった部分が変化したのか。じっくり考えてみたいと思います。
◆新コンテンツ「ワールドツアー」は、キャラを動かす楽しさを再確認させてくれる
なぜ、挫折組は格ゲーから離れてしまうのか。その理由は多々あれど、もっともシンプルな答えは「対戦で勝てなかったから」ではないでしょうか。格ゲー自体は好きなのに、勝てない。イライラするくらいなら辞めてしまおう。私自身、何度もそういった経験をしています。ならば、“勝ち負けのない格ゲー”から、始めてみるのはどうでしょう。
『ストリートファイター6』には、既存の対戦ゲーム以外にも様々なモードが揃っており、そのなかで最も注目すべきコンテンツが、自分だけのオリジナルキャラを強くするストーリーモード「ワールドツアー」です。
詳しいレビューは別記事に譲るものの、そのクオリティはこのモード単体で1本のゲームとして成立するほど。舞台となる「メトロシティ」を探索するだけでもRPGを楽しんでいるかのような満足感が得られます。
また、シングルプレイ専用モードなので、対人戦における勝ち負けのストレスがありません。CPU戦でもトレモでもない、1人でじっくり遊べるワールドツアーは、きっとキャラを動かしたり技を出したりするだけで楽しかった頃の感動を思い出させてくれるはずです。
◆「モダンタイプ」で、プロすら超える入力精度を身につけろ
挫折組が苦労する理由の中に、「狙った場面で必殺技や連続技が出せない」という悩みがあります。この解決にはやはり、『ストリートファイター6』から採用された新操作タイプ「モダン」が役立つのではと見ています。
「モダン」は必殺技入力時におけるコマンドを撤廃した操作タイプです。例えば、従来は「前>下>斜め前下と同時にパンチボタン」だった昇龍拳が、モダンタイプだと「前方向+必殺技ボタン」の同時押しだけで出せます。入力に時間がかかる“真空コマンド”すら、「方向+対応ボタン2つ」同時押しでOK。さらにアシストボタンを押しながら対応ボタンを連打するだけでコンボが出るため、「必殺技や連続技が出せない」というストレスが、かなり緩和されます。
ここで一つ認識を改めて頂きたいのが、「モダンタイプは決して、コマンド入力が不得意な初心者救済システムではない」ということ。同時押しだけで技が出せるモダンタイプはその性質上、従来の操作では不可能とされてきた速さ&正確さで必殺技が出せるため、プロゲーマーからも「モダンのほうが強いんじゃ…?」と大きな注目を集めているのです。
従来の操作タイプである「クラシック」と比較して、相手に与えるダメージが通常の8割ほどに低下するデメリットはあるものの、対空や無敵技による割り込みがワンボタンで安定するのは、とにかく強力。近い未来、モダンタイプで活躍する選手が出てもおかしくありません。
モダンタイプを使いこなせば、プロゲーマーとのコマテク(コマンドをより早く、正確に入力できるかのテクニック)差が、相当縮まります。どうしても技が出せなくて苦しい思いをしたのであれば、モダンタイプに挑戦してみるのはどうでしょう。
◆上達までの道のりが、より分かりやすくなった
「練習だと連続技が出せるのに、対人戦だと何をしたら良いか分からず、一方的に負けてしまう」という点こそ、格ゲーで最も心が折れやすいポイントです。
特に前作『ストリートファイターV』では一定のランクまで上がると、フレームの有利不利、遅らせグラップ、ファジー、ヒット確認、シミーなど勝つために必要な知識が多く求められるため、それらを意識せずに対戦だけ繰り返しても途端に勝てなくなります。
そして最大の問題点は、そういった知識を得るための導線がゲーム内でほぼ無かったことです。上手くなるためには、「上級者の配信を見る」「ネットで調べたり、仲間を作って教えてもらったりする」といった、ゲーム外部のコミュニティに頼らざるを得ないのが実情でした。
プレイヤー同士の絆が深まるという面で見れば、“コミュニティ頼り”は決して悪くありません。事実、筆者もコミュニティの存在がなければグランドマスターまでやり込もうなんて、とても思えなかったでしょう。ただし、コミュニティに溶け込める人だけ盛り上がってしまうと、コンテンツ自体が内向きに閉じてしまい、プレイ人口減少へ繋がっていくことは明白です。
その対策を意識したのか『ストリートファイター6』では、前作までにあった「キャラクターガイド」「コンボトライアル」に加えて、フレームの概念やヒット確認まで学べる「チュートリアル」が追加されました。
また、最もお世話になるであろう「トレーニングモード」にも、「対空の練習」「差し返しの練習」「防御を崩す練習」など状況別に学べる項目が用意されています。これらを一通り遊ぶだけでも、格ゲーに対する新たな視野や気付きが得られるのではないでしょうか。
もちろん気の合うコミュニティを見つけると、格ゲーはもっと楽しくなります。特に『ストリートファイター6』の「バトルハブ」モードは、いわば“24時間営業の仮想ゲーセン”というべき場所。「ランクマは嫌いだけど、友人との対戦は楽しい」というラウンジ勢にとって、最高の場になりそうです。
『ストリートファイター6』には、「このままでは格ゲーそのものが生き残れない」「格ゲーの常識を変えてやる」という開発陣からのメッセージが散りばめられているように感じます。特に前作で多くの挫折組がストレスを抱えていた「ランクマッチ」において、敗北時のランク降格保護機能にまで踏み込んだ点には驚きました。
格ゲー未経験者や初心者、前作をバリバリ遊んでいる現役勢はもちろん、一度格ゲーから離れてしまった挫折組も、同じジャンルを愛するファンに他なりません。みんな大切な仲間であり、ライバルです。
新作発売という巨大なお祭りにたくさんのプレイヤーと対戦できる日が来るのを、格闘ゲームに取り憑かれたゲーマーの一人として切に望む次第です。
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