■長く新作が出ず、ファンたちは闘争を求め始める
ここまでの内容から、「人気があったシリーズだから『アーマード・コア6』の発表が盛り上がったのか」と捉える方はいるでしょう。それも確かに盛り上がった要素のひとつではあります。しかし、単に新作が出るから、だけではないのです。
本シリーズの展開は、2013年発売のPS3ソフト『ARMORED CORE VERDICT DAY』からしばらく沈黙していたので、今回の発表は実に9年ぶり。発売年で考えると、10年ぶりに新作が登場する流れとなりました。これをファンの視点から見ると、「10年の空白期間があった」とも言えます。
10年あれば、中学1年生がスムーズに進学し、4年制大学を卒業するまでの期間に相当します。大人でも10年過ぎれば、立場や環境も一変しかねません。誰にとっても、決して短い時間ではないでしょう。
しかも、「10年後に新作が出る」とあらかじめ決まっていたわけではなく、ファンからすれば、「いつ出るのか」「もしかしたら、新作はもう出ないのか」といった不安を抱えたまま、出口のない迷路を延々と歩いていた状態です。
新作を待ち望みながら先の見えない日々を過ごす中で、「アーマード・コア」を求める気持ちをモチーフとしたミームが、ネット上に広がっていきました
そのミームは、『ポケモン GO』が流行ったことで癒される人が増え、しかし癒されたからこそ次は闘争を求め、その矛先として「アーマード・コア」を買い、シリーズが盛り上がってフロム・ソフトウェアが新作を作る──といった内容のコメントが発端に。これは、ことわざの「風が吹けば桶屋が儲かる」にも通じる言葉遊びの一種と考えると、分かりやすいかと思います。
全く関係ない事柄を前提に、そこから「身体は闘争を求める」と強引に転じ、「人々がアーマード・コアを求める」と繋げ、だから新作が出ると締めくくる一連のこの流れは、時代と共に様々なバリエーションが生まれていき、まるで大喜利さながらの様相を呈しました。
これ自体は小粋なジョークですが、「アーマード・コア」を待ち続けるファンがいながら長い間新作が出ず、さらに今後の見通しも分からない不確定な状況がその下地にあってこそ。ネタとして使っていた人もいる一方で、新作を持ち望む気持ちをこうした形で表現していた人も少なくなかったのです。
そしてこのネットミームが流行った結果、「アーマード・コア」を遊んだことがない人にも、そのシリーズ名が知られるほど広まりました。そうした草の根的な動きでシリーズの知名度が広がり、「アーマード・コア」シリーズに関わった一部スタッフによる『デモンエクスマキナ』が他社からリリースされたものの、「アーマード・コア」自体の新作は訪れないまま長い時が過ぎていたのです。
ちなみに、このネットミームの代表的な「身体は闘争を求める」という台詞ですが、「アーマード・コア」作品には存在しない文章です。いかにもな言い回しの秀逸さも、このネットミームが流行った理由の一端だったのでしょう。
■ミーム化するほどの熱意と、フロム・ソフトウェアの勢いで、期待固まる『アーマード・コア6』
一時代を築きながらも、その後は9年間沈黙を貫き、ネット上では独特なミームまで広まった「アーマード・コア」。多くの方が期待し、ですが予想していなかった最新作の発表が訪れます。
少し大げさな表現になりますが、ネットミームの定着化も手伝い、「アーマード・コア」は半ば都市伝説のような扱いでした。そんな状況に投下された『アーマード・コア6』の発表がもたらした衝撃の大きさは、ここまでの流れを踏まえてみれば想像に難くないことでしょう。
しかもフロム・ソフトウェアは、今年2月にリリースした『ELDEN RING』の販売本数が1,750万本を突破(9月時点)し、世界的な大ヒット作を出したばかり。そのため、同社への期待は相乗効果で高まるばかりです。こうした勢いと、長らく待ち焦がれたファンの熱意が噛み合えば、今後シリーズ最大の盛り上がりを見せる可能性も十分あります。
かつて“傭兵”として戦い続けたファンだけでなく、ミームでしか知らなかった方々にとっても、『アーマード・コア6』の発表は驚愕の出来事でした。ここまで高まった期待を受け、シリーズ最新作はどのような刺激と驚きをユーザーに提供してくれるのか。まずは、新たな続報に胸を膨らませるばかりです。
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※記事に使用している画像は、全て『ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON』のものです。