『バイオハザード』シリーズの実況配信や、「わたくし」「ですわ~」など、やたら耳に残るお嬢様口調で一世を風靡するバーチャルライバー「壱百満天原サロメ」さん。その特徴のひとつである、顔文字を多用した“サロメ構文”を解説する“サロメ構文のススメ”が、同氏のTwitterで公開されています。
画像では「皆さん 24時から配信に是非来てください」という内容を、サロメ構文として再構成する実践形式で解説が行われています。そしてポイントとして挙げられているのが、絵文字の多用することや、話したいことや脈略のない文章を好きに書くこと。そこで本稿では、現役ライターである筆者がこのサロメ構文を詳しく紐解いていきましょう。
内容を伝える一段落目
まず言えるのは、一段落目で最も伝えたい内容を簡潔に記しているのが特徴的です。そして「24時」という最も重要である時刻を強調しており、「配信」というワードをサロメイト(壱百満天原サロメさんのファンの総称)が実際に使用するPCやスマートフォンで強調表現することで、共感性の高いものになっています。お決まりの100点満点の絵文字やキラキラしたハートの絵文字もふんだんに使うことで、それらの強調絵文字が不自然にならない整合性が取れた内容になっているのも見事です。
怪文書、二段落目
二段落目以降は、一見すると怪文書のようですが、これもサロメ構文の欠かせないポイントであり、そのときの「話したいこと」と「脈略のないこと」を書くことで、独特の世界観が作り上げられています。サロメさんが「今起きていること」や「明日朝早い」ことなど、その突拍子もない内容は事実、配信とあまり関係がないことであり、「今配信の告知をしてるんだから、そりゃ起きてるだろ!」とツッコみたく気持ちもあるのですが、次の段落に目をやると“重要なキー”が隠されていることに気づきます。
思考とろける
筆者が重要と捉える三段落目には、早くゲームがしたい旨とサロメイトを気遣うような一言が含まれています。これらのワードによって、「早くゲームがしたい」=「早くみんなとの配信を楽しみたい」といった構図が成り立つことをサロメイトへ気づかせると同時に、サロメさんが我々サロメイトのことを気遣ってくれているという事実が、思考を溶かすような“文章の終着点”となるのです。
まとめると、一段落目で確実に内容を伝えることで、配信の告知としての機能をしっかりと果たしつつ、二段落目でサロメさん独自の世界観を演出、最後の三段落目では、サロメイトの思考をドロドロに溶かし、サロメさんの世界観に釘付けにするという……とても機能的であり、理にかなった文章と言えるでしょう。
言葉を選ばずに述べると、サロメさんの絵文字を多用した文章は、筆者としてはやや苦手なものでした。ところが、実際にひとつひとつ紐解いていくと、そこには確実に意味と機能があり、文章として成立していることに驚かされたのです。昔と今では常用している言葉や文体が異なるようにサロメ構文もまた、新しい文章の様式のひとつといえるのかもしれません。歳を重ねても、まだまだ学ぶことは多いものです。