メンバーのモチベーションと、チームのサポート、ファンの応援があって「NORTHEPTION」はここまで来られたーLCQ敗退が決定したBlackWizは何を想うのか【インタビュー】

試合を終えたばかりのNORTHEPTIONのリーダー・BlackWiz選手へ行われた合同インタビューの様子をお届け。悔しい最後のラウンドの振り返りや、チームと自身の成長、そして今後について伺いました。

e-Sports インタビュー
メンバーのモチベーションと、チームのサポート、ファンの応援があって「NORTHEPTION」はここまで来られたーLCQ敗退が決定したBlackWizは何を想うのか【インタビュー】
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トルコ・イスタンブールにて9月に開催される、年に一度の世界王者の座をかけて争う「VALORANT Champions 2022」。その最後の出場権をかけた最終予選「VALORANT East Asia Last Chance Qualifier(LCQ)」が開催中。日本代表の1チームである「NORTHEPTION(Nth)」は、Day5・Match2、韓国代表「On Sla2ers(ONS)」と対戦。マップスコア1-2で敗北を喫し、LCQからの敗退が決定しました。

ONSピックの1stマップ:バインドでは、攻撃スタートのONSの猛攻と揺さぶりに序盤から流れがつかめず、ラウンドスコア2-10と大差をつけての折り返し。その後Nthもピストルラウンドを含め果敢に撃ち合う姿勢を崩さずにラウンドを重ねるも、前半の差が響いたか、9-13で敗北。

続く2ndマップ:スプリットでは、一転して攻撃スタートのNthが流れを握る展開に。要所の撃ち合いをしっかり勝ち取り、ラウンドスコア11-1でやられたことをやり返すという展開。その後ONSの攻撃にヒヤリとする場面もありましたが、13-8でしっかりと勝ちきりました。

運命の3rdマップ:アセントでは、防衛スタートONSがエントリーに対する的確なアビリティーを入れて堅い守りを見せ、スリフティーなども挟みつつラウンドスコア3-9と後が無い状況。攻撃に転じてから堅調にラウンドを重ねるも、6-12でONSにマッチポイントを取られるも、怒涛の追い上げを見せたのがNth。5ラウンド連取であと1ラウンドでオーバータイムへ持ち込めるというラウンドを落とし、11-13で惜敗。マップスコア1-2でONSが勝利を収め、アッパーで待つEDward Gamingとのグランドファイナルへ挑みます。

ONSのアビリティーをしっかりと入れたエリア取りに苦しめられつつも、あと一歩まで迫ったNthでしたが、この敗北をもってLCQから去ることが決定し、Championsへの出場は叶わずという結果に終わりました。

今回は、試合を終えたばかりのNORTHEPTIONのリーダー・BlackWiz選手へ行われた合同インタビューの様子をお届けします。悔しい最後のラウンドの振り返りや、チームと自身の成長、そして今後について伺いました。

ーー悔しい結果となりました。戦いを終えての率直な感想をお願いします。

BlackWiz選手:本当に悔しい気持ちと同時に、なにかすごい大きなものを失ったような気持ちがあります。

ーーONSの攻撃に苦しめられましたが、実際に戦ってみていかがでしたか?

BlackWiz選手:昨日のEDward Gamingは、スキルを使わずに撃ち合いに来るようなチームだったんですが、今日のOn Sla2ersはスキルや時間をうまく使って、敵を左右に揺さぶってくるようなプレイスタイルでした。そのギャップもあり、どこか慣れないような試合だった印象です。

試合ではBlackWiz選手の力強いクラッチも飛び出した

ーー特にバインドでは、BlackWiz選手がスネークバイトやヴァイパーズピットを放ったとしても、敵が前に前線を押し上げてくる、といったシーンが何度か見られましたね。

BlackWiz選手:バインドで悔しいなと思うのが、ヴァイパーズピットを使用したらラウンドの半分以上を落としてしまったところです。ある調整バイのラウンドでは、自分が前ラウンドでセーブした武器をMeteor選手に託して、シェリフを持った状態でヴァイパーズピットを使用したところで敵が攻めてきて、「あのときヴァンダルを持っていれば」とか、複数人で前に出た敵を処理しようとしたら横を突かれてしまったとか、たらればですが、色々と考えてしまいます。

ヴァイパーズピットを使った立ち回りには自信があり、「絶対にラウンドを取るぞ」という状況で使ってるんですが、敵の動きが上手くて、そこを取れなかったのが悔しかったですね。

ーーやはり止めるつもりで打ったアビリティーを超えてエリアを取られてしまうと、対策もしにくい部分がありましたか。

BlackWiz選手:FPSなので最終的にエイムで解決するしかないんですが、ヴァイパーのいるところに走って出てきて、走って撃ってくるというのがとても多く、トレードキルも取れない場面が多かったですね。

ーー見ていてとてもストレスが溜まるやられかただと感じていました。

BlackWiz選手:そうですね...。

ーー1stマップ:バインドでの後半の巻き返しでは、裏取りなど、チームの動きが大きく変わったような印象を受けたんですが、巻き返すきっかけや、チーム内で動き方の変化などはいかがでしたか?

BlackWiz選手:気持ちは死んでいなかったので、気持ちで何とかっていう感じでした。動きに関しては、JoXJo選手がIGLとして全体の動きを指揮しているので、その判断に従ったおかげだと思います。

ーーラウンド差もあり、メンタル的にも追い詰められていた部分があると思いますが、後半はどのような気持ちでプレイされていたのでしょうか?

BlackWiz選手:僕らはこのChampionsへ向け、泣いても笑っても最後のチャンスというのをみんなで話していました。大会は諦めた時点で終わりなので、2-10とスコア差があろうと、「切り替える」という感じでなく、「このマップを取ろう」という気持ちだけです。なのでメンタルは誰も負けておらず、なんなら笑いが起こる場面もあるほど、メンタル面は良かったと思います。

ーー3rdマップ:アセントでは意地のぶつかり合いという試合だったのですが、11-12であと1ラウンド取ればオーバータイムというラウンドでは、どのようなコミュニケーションがあったのでしょうか。

BlackWiz選手:Meteor選手が1ピック取ってMIDのラークも倒し、あとはロックダウンでリテイクすれば取れるという話はしていました。ただ、敵が前目で圧をかけてきたというのもあり、Derialy選手がロックダウンを置くのが遅くなってしまいました。

アルティメットは個人の判断なのでなんとも言えないところなんですが、味方が寄ってきたタイミングでディフェンススポーン側に使ってバックサイトだけ敵が動けるような状況にして、アストラのスターで撹乱すれば勝てたのかな?という話も試合のあとに出たりしてました。あのアルティメットがもうちょっと早く発動できていればな、という感じではあります。

もちろん誰かが悪いというわけではなく、ロックダウンを僕たちが持っているからこそ、敵は前目でしっかり圧をかけてきて、そこの撃ち合いでも負けて2v2まで持っていかれてしまったので、相手が上手かったとしか言えないですね。これもたらればですが、あそこでアッパーを倒せていれば結果は変わっていたのかなと思います。

ーー焦りもありましたか。

BlackWiz選手:あのラウンドに限らず、6-12になった辺りから「これはヤバイな」と感じているようなメンバーもいて、焦りはあったと思います。言ってしまうと、バインドからちょっと焦りはありました。そこからスプリットで持ち直したのですが、アセントの攻撃で上手く行かなくなってしまいました。

ファーストラウンドでもAラッシュしたらスタックされたり、攻めたい場所に多くの敵が配置されていたりと、チームとして上手くいくと思った動きが一切刺さらなかったので、IGLのJoXJo選手としても、このコールで良いのかといった迷いや焦りがあったと感じます。

最終ラウンドでも、みんなで「行ける行ける!」「ここ取ってオーバータイム!」と勢いづいていました。ですが、焦りすぎたというか、落ち着きがなかったというか、足並みが揃っていなかった部分があったり、落ち着いているメンバーと焦っているメンバーでバラバラになったりしてしまっていたのかなと思いました。

揺さぶりと裏取りが光ったスプリット

ーー半年という僅かな期間でここまでの躍進を見せたNthですが、もっと時間があったり、このメンバーがもっと早く集まっていれば更に力を出せたと思うところはありますか?

BlackWiz選手:メンバーがオンラインで集まって練習している分には多分そこまで変わらなかったんじゃないかなって思います。ブートキャンプや、その後のオフライン大会、世界大会があってとても練度が高まったという部分がありました。オンラインでもそれなりに練度は上がると思いますが、リアルで会うことによって信頼感もより高まって、相乗効果で良くなっていくと感じたので、コロナなどもなく、気軽に国境を超えて集まって練習や大会に臨むことができれば、違っていたのかなとは思いますね。

ーーOn Sla2ersも同じ場所で集まってプレイしていましたね。

BlackWiz選手:日本チーム以外は全部ゲーミングハウスなど、集まってプレイしていましたね。オフラインであれば横を向いて落ち込んでいる選手に「大丈夫!」と励ませるんですが、オンラインではやはり声だけなので、空元気なのかとかの判断も難しいところがあります。やはりそういう部分はオフラインで集まってプレイする強みだと思いました。

ーーただ、半年でここまで強いチームとなって国際大会へ出場したり、LCQでもここまで勝ち上がったというのはとてもすごいことだと思います。この半年を振り返っていかがですか?

BlackWiz選手:僕も含めてNORTHEPTIONのメンバーは、良い意味で勝つことに執着していて、絶対にうえに行くという気持ちがみんなあったからこそ日本一も取れたし、Stage2で更に強くなれたと思います。

そして、オーナーやマネージャー、チームのサポートで、僕らがのびのびとプレイできる場所を作ってくれたことと、ファンのみなさんが応援してくれたことです。ブートキャンプのときにも、チームがファンのみなさんからの声援を受けてレベルアップしているような印象を持ちました。

メンバーのモチベーションと、チームのサポート、ファンの応援があって、NORTHEPTIONはここまで来られたと思います。

ーー自身として、どのような成長をすることができたと感じていますか?

BlackWiz選手:考え方やチーム戦うことに関して、bailコーチやMeteor選手・JoXJo選手の韓国勢だったり、xnfri選手・Derialy選手、Xandriteさんも含めて、みんなとのプレイを通して、今までの常識だったり理屈を覆されるようなことが多くて、自分の中ではあり得ないことが当たり前だったりと、自分が無知だったことを痛感させられた1年で、さらにレベルアップできたと思います。ですが、自分のプレイヤーとしてのパフォーマンスがStage2からあがらなかったことは悔しいですね。

ーーこれから自分自身、どんな選手になっていきたいと考えていますか?

BlackWiz選手:今後選手を続けていくのであれば、一度休養をしてしっかりそのメンタルなどもリフレッシュした上で、練習にもっと没頭し、基礎を固めたいと思います。僕は今まで、趣味でゲームをやっていて、趣味の延長線上で誘われてプロになったので、他のプロのように、一から基礎を勉強してきていませんでした。細かい部分での差や、日によってパフォーマンスが違うのは、そういう基礎ができてない部分だと思います。選手としての当たり前なことをしっかり強化して、また望むか......あるいはこのオフシーズンで気持ちが消えたら、プレイヤーとしては身を引くかな....という感じです。

ーーここまで応援してくれたファンへメッセージをお願いします。

BlackWiz選手:この一年間、応援してくださったファンの方々、本当にありがとうございました。LCQは3位という結果で、皆さんが期待してたような結果は出せなくて本当に残念ですが、僕としては皆さんに支えていただいたおかげで、この一年楽しくプレイすることができたと思っています。本当にありがとうございました。



悔しい試合を終えた直後で、メンバー、チーム、ファンへの感謝をしっかりと述べる姿は、NORTHEPTIONというチームを引っ張ってきた大黒柱としての一面を思わせるインタビューでした。

「ZETA DIVISION」を倒し、国際大会「VCT 2022 Stage 2 Masters Copenhagen」への出場や、LCQをここまで勝ち上がったチームとしての躍進は、チームメンバーそれぞれの思いとモチベーション、チームのサポートと、ファンの声が作り上げたものでした。

《Okano》
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東京在住ゲームメディアライター。プレイレポート・レビュー・コラム・イベント取材・インタビューなどを中心に、コンソールゲーム・PCゲーム・eスポーツについて書きます。好きなモノは『MGS2』と『BF3』と「Official髭男dism」。嫌いなものは湿気とマッチングアプリ。

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