大手企業の不参加表明が相次ぎ、2023年3月31日に中止が発表されたE3 2023。ゲームの見本市として始まり、かつては今後の業界を占うとまで言われた本イベントですが、コロナ禍でのイベント中止の傾向や、それに伴う急速な業界のオンライン化を受けその進退が問われ始めているように見えます。本記事ではそんなE3の今後の動向の参考となる近年の開催状況を確認していきます。
業界向け見本市からゲーマーの祭典へ
E3はアメリカの家電見本市CESでのゲーム関連展示から独立する形で生まれたイベントです。第1回開催は1995年とその歴史は古く、初回ではそのころ日本のゲームハード業界で第一線を走っていたセガがセガサターンを発表すると同時に、ソニーが今ではゲーマーお馴染みとなったプレイステーションを初めて発表した場でもありました。
見本市からの独立という出自から当初はメディア、流通関係者向けのビジネスイベントの色が強く、クリスマス商戦へ向けての交渉の場としての役割を期待されていた本イベントでしたが、一般ゲーマーからの注目も大いに集め一時は業界の将来を占うイベントとまで呼ばれていました。
一般の来場者も年々増加し、2007年にはこれを問題視して出展者、招待客共に数を絞った小規模の開催としたこともありましたが、話題性の低下から存在意義を欠くとの観点で近年ではむしろ一般参加者を広く受け入れる方向にシフトし、業界全体での大きなお祭りの場として盛り上がりを見せる印象でした。
全盛期には来場者7万人越えの一大イベントに
そんなE3が全盛を迎えたのは2016年のE3 2016。初の一般来場者向けパブリックイベント“E3 Live”を開催し業界関係者約5万人と一般参加者2万人の合計7万人超が来場し、過去最大を記録していました。その後E3 2017では一般参加者への全日程公開を始め、2017年は68400人、2018年は69200人と通常日程における来場者数の更新を続けていましたが、2019年には66100人と少し記録を落としています。なお同年にはそれまで参加を続けていたソニーが初めて参加を見送っています。
コロナ禍、オンライン化の波に揉まれる近年
2020年には予定していた開催を新型コロナウイルスの流行により中止。2021年には完全なオンラインでの開催を行い任天堂やマイクロソフトなどの大手企業も参加したイベントながら、これまで通りとはいかず2022年はオン、オフ共に開催中止と現在までその存在感を見せられていない印象でした。
2022年の中止時には2023年の開催に注力し完全復活を目指すと力強い言葉を残し、イベント運営経験の豊富なReedPopとの提携も発表して盛り上げを図っていました。しかしここ数か月で任天堂やソニー、マイクロソフトといった大手3社を含む多くの企業が参加の見送りを表明するなど、一度失った求心力を取り戻すには高い壁が見受けられるようです。
“ゲーム業界の見本市”の存在意義が問われる
様々なサプライズの場として業界を盛り上げ続けたイベントだけに再興を望む声も多いE3。一方で、オンライン化の進んだ現在において出展企業側のコストやリスク、オンラインを中心とした形でのイベントの独自開催化、またE3中止の報に合わせた開催日の再告知ツイートを行った「Summer Game Fest」のような、大規模な新情報配信放送の隆盛を考えれば仕方のないことという意見も見られるなど、その存在意義が問われています。