トルコ・イスタンブールにて9月に開催される、年に一度の世界王者の座をかけて争う「VALORANT Champions 2022」。その最後の出場権をかけた最終予選「VALORANT East Asia Last Chance Qualifier(LCQ)」が、いよいよ8月8日(月)から開幕しました。
そのDay2・Match1で日本代表の1チームである「Crazy Raccoon(CR)」は、韓国代表「DAMWON Gaming(DWG)」と対戦。マップスコア2-1で初戦勝利を収めます。
CRピックの1stマップ:アセントでは、DWGがアタッカースタートのCRに対して積極的なキルを狙ってくる姿勢に翻弄され、ラウンドスコア2-10と大差がついての折り返し、後半はピストルラウンドを含めてラウンドを重ねるも、最終的には7-13でDWGが勝利。
続くDWGピックの2ndマップ:バインドでは、アタッカースタートのCRがテクニカルにラウンドを重ね、neth選手のレイズによるマルチキルやrion選手の1v2クラッチを見せつつ、ラウンドスコア7-5で折り返し、その後ピストルラウンドを落としスコアタイまで追いつかれるも、サイト中でしっかりと耐える動きや、積極的にエリアをい取っていくいく動きで、13-7と、1stマップと同スコアで、試合を最終マップへ持ち込みます。
運命の3rdマップ:スプリットでは、1stラウンドを勝利するも2ndでスリフティーを返され、互いに流れを譲らずにラウンドスコア5-7とやや不利な折り返し、後半ピストルラウンドを落とし万事休すかと思いきや、その後にスリフティーをするという、前半でやられたことをやり返し、勢いを取り戻します。終盤ではシーソーゲームが続き、試合はオーバータイムへもつれ込み、執念のようなぶつかり合いを制して14-12で勝利。マップスコア2-1で初戦を勝利で飾りました。
今回は、DWGという強豪チームとのシーソーゲームに勝ちきった「Crazy Raccoon」neth選手にインタビューを実施。DWGというチームの恐ろしさや、構成や役割の再調整、そしてneth選手自身が今回のLCQに向ける思いを伺いました。
ーー初戦の勝利おめでとうございます。劇的な勝利でしたが、戦い終えての感想をお願いします。
neth選手:DWGは評価の高いチームなので、そこに勝てたのは嬉しいですね。ですが、大会の立ち上がりに緊張などで飲み込まれてしまうのが、さいたまスーパーアリーナを含めてStage2でもありました。そこを直せていないのがちょっと気になりました。
ーーStage2は悔しい結果だったと思いますが、このLCQまでに、どのような部分を重点的に練習してきましたか?
neth選手:まずは簡単なことから変えていこうと、誰がどのエージェントを使うか、再調整しました。さらに、Astell選手が主にIGLを担当していたのですが、やはり一人だとどうしてもキャパオーバーしてしまう場面があるので、そういうときは僕がコールして引っ張っていくように決めました。
ーーサブIGLのようなこともするようになったのですね。
neth選手:レイズなど、前に出るタイプのエージェントだとコールが出しやすいんです。そういうときはコールしたり、要求したりを心がけています。
ーーneth選手はアセントではチェンバー、バインドではレイズ、スプリットではヴァイパーと、さまざまな役割をこなしていますが、マップごとでの気持ちの切り替えなどはいかがでしたか?
neth選手:ヴァイパーに関しては、 3マップ目で疲れもあり、あまりパフォーマンスは出せなかったですね。
バインドに関しては、これまでのスクリムでなぜか上手くいかなくて、何連敗もしながら今日を迎えました。過去の2週間ほどは、Meiy選手がレイズ、僕がスカイを起用していたんですが、今日だけエージェントを交換したら、いつもよりうまく動けました。あのバインドが分かれ目でしたね。バインドでの勝利でみんなのメンタルも良くなって、前向きに3rdマップへつなげることができました。
ーー3rdマップ:スプリットの終盤では、オーバータイムでもギリギリのラウンドが続いていきましたが、ボイスチャットの雰囲気などはいかがでしたか?
neth選手:最終的には勝ちましたが、自分もみんなも、相手チームよりも焦っていたと思います。ラウンドが始まるまでに最終的にどうするかなどを決められずに始まることもありました。あとはrionさんがめっちゃお手洗いに行きたがっていました(笑)。そんな微妙な空気で始まったりしたこともあって、なんとか勝ちきったという感じですね。
ーー終盤では個人技でねじ伏せるシーンもありました。rionさんがスクリーンにジャンプで突っ込むところもありましたが、トイレ行きたかったんですかね。
neth選手:(笑)。「オーバータイムは無理!」って言ってました。
ーー今回の対戦相手であるDWGは、T3xture選手がオペレーターで積極的に前に出てくる場面や、ドライピークでフラッと戦ってくるシーンが多く、掴みどころがない印象を受けました。実際に戦ってみていかがでしたか?
neth選手:NORTHEPTIONのMeteor選手と同じように、倒されることを恐れずに狙ってくるプレイが、自分たちにとっては苦手というか、警戒してもしきれない構成でもあるんです。
ーーなにをしてくるかわからない怖さがありましたね。
neth選手:プレッシャーも大きくて、1stマップ:アセントでは、ハイミッドからミッドをピークすることすら怖かったです。本当に脅威でした。
ーー一方の2ndマップ:バインドではエリアコントロールがかなりうまくいっていたような印象を受けました。
neth選手:もちろんアセントでも同じようなエリアコントロールを考えてたんですが、それもできないぐらいビビっちゃってました。でもバインドでは、いつも通りやろうと切り替えて、自分たちがリセットして試合をできたから勝てたんだと思います。
ーーなかなか気持ちの切り替えは難しいと思いますが、どのようにリセットしていきましたか?
neth選手:DWGも撃ち合い自体が強いことは間違いありませんが、アセントでも最後のほうではラウンドを重ねられてたんで、自分たちと撃ち合いの差はないと思い、実際コーチもそう言ってくれて、自信を持って撃ち合うことを意識して切り替えをしました。
ーー今年は、CRとして世界大会へ出場することが未だにかなっていませんが、今回のLCQは、どのような思いを持って挑んでいますか?
neth選手:もちろんチームのみんな、Championsに行きたい気持ちがありますが、僕個人としても、去年忙しかった分、今年は世界大会へ出場できなかったことが、昨年とギャップがあって悔しいです。
個人的な感情では、かっこよく言うと“自分への挑戦”のような気持ちで臨んでいます。
もちろんずっと選手は続けたいと思っていますが、来年に向けて自分が通用するか、ちょっと考えるところがありました。今大会のパフォーマンスで上手く通用することが、自分の強さの証明になると思っています。この大会は過去一番の覚悟を持って挑戦していますね。
ーー今の5人のロースターになってから時間が経ちましたが、この5名としてのCRは、どのような強さ・魅力があると思いますか?
neth選手:過去のCRでは、Munchkin選手(現:T1)が引っ張ってガンガン撃ち合うスタイルでゲームを組み立てていました。一方で今のメンバーでは、コミュニケーションもほぼ100%取れていて、スキルの使い方を重視し、メタをしっかりと追ったような構成をしています。戦術面と連携を自分たちの中で重視しているのが強みです。
そこに加えて、rion選手の勝負勘で、敵にノイズを走らせるようなワンピックであったり、カオスを生み出してくるようなラウンドもあります。
ーー重要な撃ち合いを一人で勝つ場面も見られましたね。
neth選手:スモーク役でもしっかり撃ち勝ってくれるので、そこを含めて自分たちの強さであるかなと思います。
ーー今後の意気込みをお願いします。
neth選手:今年は世界大会に行けていないことが、どのチームよりもギャップがあって悔しいので、それを糧に頑張っていきたいと思います。そして、自分の強さを証明できるような大会・試合を繰り広げられたらと思います。
含みを持った「過去一番の覚悟を持って挑戦」という言葉が印象的であり、世界大会への強い気持ちが表れたインタビューとなりました。初戦で勝利を収めたCrazy Raccoonは、8月11日(木)に日本チームのNORTHEPTIONと対戦します。