2023年8月4日、Bluepochの新作RPG『リバース:1999』のクローズドβテストが開催されました。
本作は数々の時間を遡りながら旅を続けるタイムキーパーの少女・ヴェルティが、時間を遡行させる正体不明の怪奇現象「ストーム」の謎を追っていく世紀末タイムリバースRPGです。
レトロモダンな空気が漂う古き良き西洋の時代をゲームの世界に落とし込んだ本作は、先行してサービスが開始された中国においてすでに高い人気を誇るタイトルです。
今回はそんな注目作である『リバース:1999』のクローズドβテストに当選した筆者が、ゲームのプレイレポートとその魅力をお届けしていきます。
◆時代そのものが消失し、徐々に過去へと遡り続ける絶望の世界
『リバース:1999』の世界は、1999年12月31日23時59分以降、時が進むことなく時間が巻き戻ってしまった世界。
建物が溶けはじめ、雨が空へと上り、人間までもが消えていく。やがてその“時代の全てが消失”してしまう不可思議な現象「ストーム」の到来によって、世界は時間遡行を繰り返しています。
主人公の少女・ヴェルティは、ストームの影響を受けることなく時代を渡り歩いてきたタイムキーパーという存在です。彼女は物語開始時点ですでに多数の時間をさかぼっており、消失してきた数々の時代を記録し続けてきました。
物語ではストームの秘密を探るため「神秘学家(アルカニスト)」(以降「アルカニスト」)と呼ばれた、魔法のように特殊な力を行使できる人材を仲間にしながら時代を巡っていきます。
そんなヴェルティがストームの秘密を追っていく中で、度々邪魔をしてくるのが秘密結社の「マヌス・ヴェンデッタ」。
ヴェルティの所属している組織「聖パブロフ財団」とは明確な対立関係にあり、何やらよからぬ思想を掲げて活動している危険な集団です。作中では1960年代のロンドンや1920年代のアメリカなど、各地を転々としながら時空を超えた秘密結社との戦いが描かれていきます。
ストームはただ時代を消し去るだけではなく、消える時代に存在していたアルカニスト以外の人々から動植物、物質に至るまでを全て消し去ってしまうため、まるで終末をもたらす恐怖の象徴としても描写されていました。
ストームが過ぎ去った後に残るのは、ヴェルティが助けたアルカニストと時代が消えた喪失感のみ......。ゲーム内でストームが巻き起こる場面は、プレイヤーにとっても非常に印象深いエピソードになっており、ぜひ実際のゲームプレイで体験して欲しい演出です。
◆読ませるシナリオは全編フルボイス仕様!戦略性の高いバトルシステムも要チェック
『リバース:1999』のストーリーは全編フルボイス仕様。キャラクターの立ち絵は例えモブキャラクターで名前がなかったとしてもしっかりアニメーションしている細かさです。
ローカライズも高品質で、一部フレーバーテキストの気になる言い回しがあれど、ストーリーは誇張なしで完璧な仕上がりといえるでしょう。ゲーム冒頭部分こそ固有名詞の多さ、目まぐるしく変化する状況に理解が追いつかなくなりそうですが、ところどころの疑問は後々ちゃんと回収されていくので読み続けていて正解でした。
サウンド部分のこだわりは相当なもので、中国においては特に英語版の吹き替えが非常に好評な様子。今回のクローズドβテストでは日本語ボイスが収録されていますが、英語・中国語に切り替えることも可能です。
日本では、多くのプレイヤーが日本語ボイスで遊ぶと思われますが、たまには気分を変えて英語ボイスにしてみると、西洋圏の世界観をより深く楽しめそうですね。
独自の世界で織りなすメインストーリーが主体のゲームですが、「世紀末タイムリバースRPG」と公称されているように実はRPGタイトルです。システムにはターン制のカードバトル方式が採用され、画面右下の手札からスペルカードを選択して戦います。
手札の同じカードが隣り合うと合体してランクアップを果たし、より強力な効果を持ったスペルカードに強化されていくのが特徴的。このスペルカードはパーティ編成に組まれたキャラクターごとにそれぞれ専用デザインなのがユニークです。
手札のスペルカードを移動させれば任意でランクアップが行えますが、その代わり行動回数を消費してしまいます。敵が次のターンにどのような行動を行うかは可視化されているので、プレイヤーは状況に適切なカードを切っていくのです。
バトルではヴェルティの力で手札のカードを変化させるほか、徐々に貯まっていくMP(モキシーポイント)を消費して、強力な「アルティメット」を放つことも可能です。
バトルのシチュエーションによっては特殊なルールが設けられている場合もあって、戦略的にカードを選択していく面白さが味わえます。また、ボスなど強敵相手はキャラクターを抜かりなく育てていたとしても、編成バランスが悪ければピンチになることが多々ありました。
RPGなのでキャラクターごとの役割や強みを把握した上でバトルを進めていく必要がありそうです。ただ、現状ではオートバトルが存在していないこともあり、育成素材集めといったサブコンテンツのバトルは少し手間を感じてしまうかもしれません。
◆シナリオ・世界観・音楽のどれもが高水準。身体を張りまくる主人公も魅力たっぷり!
クローズドβテストではメインストーリー第3章までが体験可能でした。
1章では『リバース:1999』の世界設定をプレイヤーに理解させつつ、2章から本格的に物語が動き出します。続く3章ではこれまでと異なる切り口で物語を描き、プレイヤーの没入度を高めています。
シナリオはかなりのボリューム感で、アドベンチャーゲームを遊んでいるほどの読み応えでした。エピソードの区切り方は特に秀逸で、演出と相まって続きが気になること請け合いです。
作中のBGMも非常に独創的なサウンドです。どこかクラシカルで落ち着きのある音楽性ながら、場面場面で印象的に使われるBGMは、まるで映画の劇伴のよう。
より端的に表現するのであれば、RPGゲームではあまり聞き馴染みのない音楽性……だなんて言えるかもしれません。レトロモダンな世界を引き立てている“一種のスパイス”といっても過言ではないでしょう。
特に筆者が魅力を感じたのは主人公・ヴェルティのキャラクター性です。紳士な風貌の彼女は一見クールそうな性格に思えますが、その内面にはかなりアツい部分を持ち合わせています。
普段は落ち着いているだけで感情起伏も多めなのです。作中では、年ごろの少女らしさを随所に感じられることでしょう。しかしながらヴェルティの魅力とは、年ごろの少女らしさを残しつつも、“タイムキーパーとして覚悟が決まり過ぎた”描写にあると思います。
敵対する人物がどのような大物であったとしても、一歩引くどころか泥臭く噛みつこうとするのがヴェルティ。女性主人公の作品にしては珍しく、まるで少年漫画の主人公のようにボロボロになります。
「主人公」と「ヒロイン」両方の特性を合わせ持ちながら、あまりにも身体を張り過ぎる場面が多く、フィジカルやタフネス、さらにはメンタル面も作中随一だと言わざるを得ません。バトルに直接登場しない分、身体を張った見せ場が多いのでしょうか……。
テスト期間中はガチャを回すための専用通貨が定期的に配られ、多くのプレイアブルキャラクターを獲得する機会に恵まれました。皆揃いも揃って個性派なキャラクターが多く、明らかに人間ではないキャラクターなんかも登場しています。
今回のクローズドβテストの遊べた範囲だけでも、ゲームとしては良好な仕上がりだと感じられました。全体的なクオリティの高さは中国で早々に人気を集めるだけのことはありそうです。
もちろん、バトルのオート機能が実装されていなかったり、キャラクターを深掘りできる要素の少なさが目立ったりと、気になる箇所がないわけではありません。
正式リリースに向けて一体どれだけゲーム部分がパワーアップを遂げられるのか、筆者は楽しみに待つことにしましょう。