新型コロナウイルス感染拡大防止を呼びかける「東京アラート」が発動された2020年6月に、タクティカルシューター『VALORANT』は正式リリースされました。コロナ禍の巣ごもり需要の煽りを受け、正式リリースから1年で毎月の平均アクティブプレイヤー数が1,400万人を超える盛況を見せました。
また、Twitchの視聴者数ランキングには常に上位にマークしているほか、2022年にはZETA DIVISIONが世界ベスト3に輝き競技シーンでも注目を集めるなど、“見る文化”の台頭による新時代の流行に乗っているタイトルとも言えます。
そんな大きな盛り上がりを見せる『VALORANT』は、今年6月でリリースから3周年目へ突入。そして国際大会「VALORANT Champions Tour 2023 Masters Tokyo」が、6月11日~6月21日にTIPSTAR DOME CHIBA、 6月24日~25日のLower Final、 Grand Finalは幕張メッセにて開催されました。
今回は、ライアットゲームズで『VALORANT』の開発を束ねるエグゼクティブプロデューサーのAnna Donlon氏と、ゲームディレクターのAndy Ho氏にインタビューを実施。リリースからの3年間や開発において大切にしていることや今後について伺いました。
◆『VALORANT』のスタートダッシュは“期待以上”
――よろしくお願いします。日本を楽しんでいますか?
Anna:とても楽しめています。本当に素晴らしい国ですね。
Andy:僕もそう思います。東京は僕の好きな街の1つです。
――お二人がどのように『VALORANT』に関わっているか教えてください。
Andy:僕はゲームディレクターとして開発チームのサポートを担当しています。
Anna:私はAnnaです。『VALORANT』の制作総指揮として開発チームのリーダーを担当しています。Andyはパートナーのようなもので、彼からプレイヤーが求めてるものを伝えてもらい、それに助けてもらいながら私はプロジェクトの優先順位を決めたりしています。
――『VALORANT』は今年の6月で3周年を迎えました。ローンチから振り返って、プレイヤー数や売り上げ、競技シーンなどの側面でどのように成長できたと考えていますか?
Anna:ゲームがローンチした時はどのくらい期待していいのか分からなかったです。小さいコミュニティから始まって成長していくといいなと思っていましたが、パンデミックの影響か、それともタイミングが良かったのか、期待以上の反響があってすごく嬉しかったですし、光栄だと思いました。
期待以上のスタートダッシュだったため、今までの3年間はゲームの人気を私たちが追いかける3年になりました。初期の人気は凄かったですが、それで終わりかとも思っていたので、『VALORANT』は毎年成長し続けてくれて私たちもすごく嬉しいです。
――ライアットゲームズとしては初のFPSというジャンルでした。初めての試みでも成功できた要因はなんだったんでしょう。
Anna:このゲームは最初『リーグ・オブ・レジェンド』と同じような始まり方をしました。同作は、MOBAというジャンルにおいて新しくてエキサイティングなゲームを求めているプレイヤーたちに向けたゲームでした。
それと同じで『VALORANT』も新しいシューティングゲームを求めているプレイヤーのためにライアットゲームズのスタイルで作られたゲームだから成功しましたし、私たちも含む「プレイヤーのためにゲームを作る」という精神がカギだと思います。
Andy:このゲームをプレイしてくれるプレイヤーたちには感謝しかありません。僕ら自身がプレイヤーと同じくらいゲームを、MOBAやシューティングといったジャンルを愛すことも重要だと思っています。
――『VALORANT』の今後について、どれほどの構想を持っているのでしょう。何年分かに区切った構想などはあるのですか?
Andy:無限(endless)だと思っています。短期的な目標や調整はあるけど、長くゲームを続けるための基礎も重く見ています。「ここまで計画してる」というよりは、永遠に続けようという気でいますね。数年単位でプレイヤーが何を求めているか、重視すべきは何かなど考えますが、「ここで終わり」というような考え方は一切していません。
Anna:長くゲームを続けていこうとするにはバランスが重要です。3年後、5年後を見据えたプランも今プレイヤーが求めてることも、どちらも大切です。ですが、その2つが噛み合わない時もあります。なので臨機応変にプランを変えていく必要がありますし、ソフトウェア開発にかかる時間も考えないといけないと思っています。バランスを常に考える必要がありますね。
――『VALORANT』ではエージェントを中心に、メタを大きく揺るがす調整がありますよね。どのようなプロセスで決まっていくんでしょうか。
Andy:まずバランス調整にはいろいろな視点が必要です。ランク、アンレート、競技シーンなどですね。調整の頻度も考える必要があって、少なすぎると飽きがきますし、頻度が高すぎると『VALORANT』でなくなってしまいます。
また、ゲームバランスはその時その時でしか調整できません。例えば最初期のジェットはあまり強いとは考えられていなかったですが、開発陣からすると「いずれ、わかる時が来る」と思っていました(笑)。実際、プレイヤーは時間が経つにつれてその強さに気づいて、調整が必要になりました。ジェットの調整については「頭を使ったプレイを要求する」というのがひとつの判断材料でしたね。
――現在『VALORANT』には全部で22のエージェントが存在します。今後さらにエージェントを追加することで初心者の敷居があがってしまう懸念がありますが、どのように考えていますか?
Andy:難しい問題ですね、これもバランスが大切だと思います。エージェントを増やすとプレイヤーたちが好きなエージェントを見つけやすくなるという利点があります。今のところはまだ、エージェントが多すぎるとは思っていないですが、いずれ気にかけなくてはいけない問題のひとつになると考えています。
――最後に日本の『VALORANT』ファンへメッセージをいただけますか?
Andy:プレイしてくれて本当にありがとうございます。僕らが皆様のために日々開発を頑張っていることをどうか知っていただけると嬉しいです。繰り返しになりますが、本当にありがとうございます!
Anna:コミュニティには感謝してもしきれないです。日本のプレイヤーたちは私たちにとって本当に特別ですし、社内でもいつも日本の話をしています。日本でここまで『VALORANT』が人気なのもとても嬉しいです、本当にありがとうございます!
――貴重なお話をありがとうございました!
現在『VALORANT』ではEpisode 7 Act 1が進行中。22人目のエージェント「デッドロック」と、新たなゲームモードである「チームデスマッチ」が追加。徐々に変化するメタによって常にゲームは新しいものになっていきます。
無限(endless)に続けていく意志を持った『VALORANT』が今後どのような展開を見せるのか、競技シーンとあわせて注目していきましょう。