9月に開催された東京ゲームショウ2022では、様々な新製品が展示・発表されました。ゲーマー向けのPCやマウス、キーボード、その他アクセサリーなど、巣ごもり需要で賑わう市場に多数のニューカマーが加わっています。ASUSのゲーミングノートPC「Chromebook Vibe CX55 Flip」(以下「Vibe CX55 Flip」)も、そのような製品のひとつ。これは日本でも普及しつつあるChromebookではありますが、このノートマシンはなんとクラウドゲーミングに特化したモデルなのです。グラボ付きのゲーミングPCはもう必要ないのか!?
認知度急上昇のChromebook
パンデミックをきっかけに、日本でも教育用ノートPCとしてのChromebookが注目されるようになりました。
Chromebookはその名の通り、Google提供のChromeの利用に特化したもの。起動が早く、低スペックのプロセッサーや小容量メモリでも実用的なパフォーマンスを発揮するのが特徴です。オンライン通話やGoogleドキュメント、スプレッドシートの編集、動画視聴、そしてブラウジングといった「基本的な作業」であれば、Chromebookでも十分にその役割を果たすことができます。
たとえば筆者の所有するChromebookは2万円台で購入したものですが、Game*Spark向けの記事の執筆や入稿作業、そして画像の編集くらいならこのChromebook1台で完結させることが可能です。まさに超絶コスパ!
そしてここ数年の間に、ゲームをプレイできるChromebookというものも開発されるようになりました。もちろんここで書く「ゲーム」とは将棋やチェスや麻雀のようなテーブルゲームではなく、たとえば『原神』のような「重くて綺麗で動きの激しいゲーム」です。しかし、Chromebookはそもそもが「ハードに高性能を求めない」というコンセプトの製品。今回取り上げる「Vibe CX55 Flip」も、最新型のグラフィックボードが搭載されているというわけではありません。
そこで「Vibe CX55 Flip」が想定しているのは、クラウドゲームです。
Windows機の基準で考えるな!
クラウドゲームとは、一言で言えば「ゲームのストリーミングサービス」。データをデバイスにインストールするのではなく、サーバー上で処理や通信を完結させます。
良好なネット環境があるという前提が必要ですが、クラウドゲームはデバイス即ちPCに対して突出した高性能は求めません。従って、「Vibe CX55 Flip」のスペックもWindowsユーザーから見れば至って平凡……というより、むしろ物足りなさすら感じます。
プロセッサーは2種類。上位版はInter Core i3-1115G4、下位版はCore i5-1135G7です。メモリは8GB、ストレージはSSD 128GBという点は2種に共通。144Hzリフレッシュレート対応、タッチパネルの15.6型ワイドTFTカラー液晶画面、360度回転エルゴリフトヒンジはあるものの、あとは「凡庸」どころかこれじゃ不安……というような数字が並びます。今時、メモリ8GBは控え目もいいところじゃないか!?
ですがこれは、Windows機を基準にした場合の見方。今回の製品はChromebookです。メモリ8GB、ストレージSSD 128GB、第11世代Core i5は、Chromebookの範囲で言うならとんでもなく高スペックと言っていいでしょう。
『原神』だってプレイできるぞ!
この「Vibe CX55 Flip」を使えば、何と『原神』もプレイできます。もっとも、この場合の『原神』は上述の通りクラウドゲーム版。処理はサーバー上で実施されます。従ってネット回線の速度低下がプレイにとって致命的な要素となってしまいますが、その問題さえ克服できればグラボ付きのWindows PCでプレイする時の感覚と殆ど変わりません。
てかこれ、確かにすごい! 本当にグラボついてないの? 実はASUSが超極薄グラボの開発に成功して、密かにそれが搭載されてるんじゃないか……という疑いすら抱いてしまいます。剣をブンブン振り回しても、目立ったラグが発生しない!ただ、その衝撃と同時にひとつ大きな疑問が筆者の頭に浮かびます。
日本ではニッチな「クラウドゲーム」
Game*Sparkの経験豊富な読者諸兄諸姉はともかく、「ゲームは時々プレイする程度」というライトユーザーの間では「クラウドゲーム」そのものが知られていません。
去年、某大手メーカーがライトユーザー向けゲーミングノートPCを発表した際、開発担当者が記者会見で「日本ではPCゲームのシェアがまだ大きくない」と話していました。この「PCゲーム」とは、もちろんSteamやEpic Gamesで販売されているデータ配信型のゲームを指します。クラウドゲームの場合は日本ではまさに「番外地」というような具合で、そのあたりが「Vibe CX55 Flip」の販促の足を引っ張ってしまうのではないか……?
日本では、クラウドゲーム自体がコアなゲーマー層を除いてほとんど知られていません。このあたりのPR活動、周知活動は実施する予定ですか?――9月15日に幕張メッセで催された「Vibe CX55 Flip」の製品発表会で、筆者はこう投げかけました。この質問に応じたのは、ASUS JAPAN株式会社システムビジネスグループ プロダクトマネジメント部 プロダクトマネージャーのレオン・チェン氏です。
チェン氏いわく、「現在の日本における“クラウドゲーム”は非常にニッチなもの」。そこでASUSはクラウドゲーム配信サービスと協力し、オンラインとオフラインの両軸から“クラウドでゲームを遊ぶ”ということをPRしていく方針とのこと。オンラインではWeb上の広告展開、オフラインでは販売代理店と共に製品展示やデモプレイを実施していくということでした。
デモプレイは楽しみですよね! やはりこういった製品は、実際に手に取ってみないとその良さがなかなか分かりません。グラボがないのにラグなく動作するクラウドゲーム版『原神』の衝撃は、ぜひ読者の皆様にも体験していただきたい!
最後に、「Vibe CX55 Flip」の価格について。Chromebookは製品自体が高スペックではないため、その分だけコストを抑えられるという大きなアドバンテージも有しています。「Vibe CX55 Flip」の気になるお値段は、下位モデルが8万9,800円、上位モデルが119,800円。セールでもないのに10万円切り!発売は10月26日(水)に予定しており、12日(水)午前11時から一般予約受け付けもスタートしています。PCゲーム体験に新しい選択肢を増やしたい方はこの機会にチェックしてみてはどうでしょうか?