2023年9月19日、ゲーミングPCブランド「GALLERIA」を展開するサードウェーブはクライアントビジネス方針発表会を開催しました。発表会は同社の取締役 兼 上席執行役員副社長である井田晶也氏が登壇し、「前期となる40期の振り返り」、「今期からの中期経営計画」、そして「PCブランドの再定義」という3つのテーマで今後の方針が語られました。
また、GameBusiness編集部は発表会を終えた直後の井田氏に、今回発表された方針に対する詳細や狙いをうかがいました。それも併せてお届けします。
――何故このタイミングでリブランディングを図ったのでしょうか?
井田今期で創立40周年を迎えるからというのもありますが、昨今はAI関連の事業への需要が大きく伸びています。データーサーバーを用いずにAIの検証を行える環境を作るのであれば、スペシャリティな製品を得意とする弊社が担うべきであると考えました。また、CADのような設計デザインに向けた製品はあまり展開してきませんでしたので、今後はそうした市場も開拓していきます。
前期の振り返り―売上高は対前年でフラット
コロナ禍によるリモートワークの推進や巣ごもりによる需要の大幅像が落ち着きを見せ始めた反動もあり、売上高は前年比でほぼ横ばいに(2022年:754億円/2023年:765億円)。
将来に備えた戦略的な投資として本社の移転、神奈川県平塚市への物流センターの設置、10店舗の新規出店などを行って売上は改善されたものの、コンシューマーの需要減が続いていることからいまだ厳しい状況にあるとしました。
今期からの中長期戦略―成長を加速させる5つのポイント
今期はサードウェーブ創立40周年となる節目の年であることも手伝い、同社はこの1年を戦略的転換点であると位置づけています。
ビジョンである「100年先も世の中に求められる会社であるために」、ミッションである「人々の創造活動の可能性を最大限にする」を達成すべく、今後も売上を伸ばして2025年には1,000億円規模を見込んでいます。その布石として、今期は5つのポイントに注力して成長のさらなる加速を狙うとしました。
――日本のPC市場において、売上1,000億円達成はチャレンジングに思える。具体的な戦略は。
井田日本のPC市場は、約7割が法人向けで残り3割が一般消費者向けといわれています。しかし、消費者向けのパーツの小売りから歴史が始まった弊社の売上比率はその正反対に近く、法人に向けて売上を伸ばす余地がまだ残されています。
戦略としては、「法人ニーズを捉えたプロダクトの提供」と「法人向けの営業活動の強化」の二軸で考えており、後者については既に体制もかなり手厚く整えてきています。最終的には法人向けと消費者向けの比率を5:5にできればと考えています。
ゲーミングPCユーザー層の拡大
ゲーミングPCブランド「GALLERIA」はすでに一定以上の知名度と実績を築けているが、ユーザー層をさらに広げていきたい。若年層へのアプローチはできているが、特に高年齢者向けのアプローチなども視野にいれている。
クリエイター・デザイナー向けPCのさらなる成長
クリエイター・デザイナー向けとしては「raytrek」ブランドを展開中。今後も個人向け、法人向けの双方でさらなる需要拡大を狙っていく。
法人市場のさらなる開拓
サードウェーブが得意とする従来のハイエンド向けモデルに加え、より広く訴求できる一般的なスペックのモデルを新たに投入予定。
文教市場におけるハイエンドPCの訴求
これまでも高等教育の現場への導入に力を入れてきたが、訴求する範囲を小学校~高校などにも拡大し、幅広い貢献を目指す。
――文教市場からの需要があった際は、GALLERIAとraytrekどちらのモデルを勧めるのか。
井田ブランドの指定がなければまずはraytrekをお勧めしますが、特定のブランドをご希望の際は、リクエスト通りの製品をお届けします。たとえば「子どもたちにプロゲーミングと同じ環境を用意したい」というようなお話であれば、法人向けであってもGALLERIAをお届けすることになります。
継続的な店舗展開と製品訴求
引き続き「ドスパラ」の店舗展開を拡大。新規店舗を10店展開した前期に続き、今期も店舗展開を加速させていく。
PC向け3ブランドの再定義―全製品を3ブランドに集約
そして戦略的転換点における最大の挑戦として、展開しているPC向け3ブランドの拡張と再構築を発表しました。サードウェーブの全製品を「GALLERIA」、「raytrek」、「THIRDWAVE」3ブランドに集中させていくことを前提に、各ブランドを以下のように定義しました。
GALLERIA
従来からのゲーミングデバイスをとしての立ち位置を強化しつつ、コンシューマー向けのブランドとして再定義。個人であればPCゲーマーのみならずクリエイターやデザイナーに向けても展開し、あらゆるコンシューマーが満足するハイエンドかつスペシャリティなブランドへ。
raytrek
コンシューマーからプロフェッショナルまで幅広くフォローしてきたが、CAD、AI、VRなどの業務で使用されるようなプロフェッショナル向けに特化したブランドとして再定義。施策第1弾としてワークステーションシリーズをraytrekブランドに統合し、信頼の獲得を目指す。
THIRDWAVE
コンシューマー/プロフェッショナル向けの双方に製品を投入していく唯一のブランドとして再定義。若年層、高年齢層、ビジネスユーザーなど、幅広い層への訴求を目指す。そのために、サードウェーブならではのカスタマイズ性の高さや、国内生産による短納期を生かしていく。
――PC向け3ブランドをリブランディングした狙いは。
井田各ブランドの定義、指向をシンプルにまとめることで、より分かりやすい製品訴求やマーケティングのさらなる精度向上を目指します。また、消費者向け、法人向けというのはあくまで弊社の戦略上の分類ですので、引き続き消費者の方がraytrek製品を、法人の方がGALLERIA製品を購入していただくこともできますのでご安心ください。
9月から11月にかけて毎月イベントを展開
サードウェーブの直近の取り組みとしては、9月21日(木)からは「東京ゲームショウ2023」でGALLERIA BASEを展開。最新モデルが出展されるほか、会期初日には国内初となるeスポーツを題材とした映画「PLAY! ~勝つとか負けるとかは、どーでもよくて~」の紹介も行われます。
10月6日(金)には、法人を対象としたAIセミナー「Dospara plus Synapse 2023」を開催。会場では新生raytrekの最新モデルが発表される見込みです。そして11月4日(土)は、コンシューマー向けに「第一回AIフェスティバル Powered by GALLERIA」を開催。毎月イベントを行うことで、再定義された3ブランドの速やかな定着を狙います。
――今後の展望や意気込みは。
井田今後はゲーミング用途やクリエイティブ用途に並び、一般の方向けのモデルにも力を入れていきます。サードウェーブは自社で製品開発を行い、最適なものを低価格・短納期でお届けできるのが強みですので、その基本に立ち返ります。そしていかに時代を先読みし、方向性を指し示せるかがチャレンジとなる、重要な1年(=戦略的転換点)になりそうです。
※ UPDATE:記事初出時、井田氏の名前に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。