人気プロゲーミングチーム「Crazy Raccoon」と株式会社Brave groupの子会社である株式会社Game & Co.がタッグを組み、2月よりサービスを展開するオンラインゲームスクール「CR Gaming School(以下、CRGS)」。
『Apex Legends』で始まった本サービスは現在、第2期生まで受講生がおり、8月26日(土)からはライアットゲームズが手掛ける5v5タクティカルシューター『VALORANT』において、新たな受講生を募集します。
CRGSは受講生一人ひとりにコーチが付き、週に一度のレッスンを通じて“ゲームの上達”を目指すスクール。専用のカルテによる現状の把握や、Crazy Raccoonのメンバーをはじめとした特別ゲストによる特別講義なども用意されています。
弊誌では、本事業の責任者を担う久保敦俊氏と、新たに始まる『VALORANT』コースでコーチ選考やコーチ研修などを担当する朝比奈雅幸氏にインタビューを実施。サービス開始してからの手応えや、コーチの選考フローへのこだわり、ティーチングではなくコーチングにこだわる理由など、CRGSが提供する教育サービスの魅力を伺いました。
◆受講生にはこれから『Apex Legends』を始める方も?
――早速ですが、『Apex Legends』でサービスを開始した手応えはいかがですか?
久保:サービス開始から3ヶ月が経ち、運営としてまだまだ至らぬ点がある一方で、とても満足いただいている実感はあります。それがマンツーマンレッスンの満足度100%、上達を実感したと回答したアンケート回答者が92.9%と数字にも現れています。直近7月に実施した受講生へのアンケートも集計中ですが、高い満足度を継続できる見込みです。手応えはとても“アリ”ですね。
――実際に募集をして集まった受講生は、どんな方が中心なのでしょうか?
久保:20代後半~30代前半の方が多く、学生さんとそうでない方の割合は半々といったところです。もう少し若い層が多いと想定していましたが、大人の方の需要が大きかったようですね。受講生全体ではは、10代前半から50代の方まで、幅広くご利用いただいています。
――週に一回のレッスンで、社会人の方でも負担になりにくいシステムというのも要因に思えます。
久保:前々からお話ししている通り、新しいサービスの選択肢を作りたいという想いから始まったものですが、それを受け入れていただけていると感じます。
――応募してきた受講生はオーディションという形で選考が設けられ、ゲームに対する本気度などが考慮されると伺いました。実際に応募された方の“熱意”はいかがでしたか?
久保:僕は全てのオーディションに関わりましたが、ゲームが上達したい方はもちろん、上達した先で就職や個人の活動に繋げたいという方もいて、それぞれ違うモチベーションや動機が見られました。とはいえ、やはり皆さんが「本当にうまくなりたい」という強い気持ちを持っており、こちらとしても「本気で向き合わねば」と刺激されましたね。
――多種多様で面白そうですね。
久保:ライバー活動へ繋げたい方もいれば、「会社の後輩に負けたくない、ゲームでも導きたい!」という方まで本当に色々でした。あとはかなり意外なことに「今から『Apex Legends』を始めたい!」という方も、少数ですがいらっしゃいました。
まだ射撃訓練場にしか行ったことがなかったり、これからゲーミングPCを買う予定だったり、ゲームに手を出せていない方が「始めるのであれば、最高のスタートを切りたい」と選択してくださっているんです。ゲームに対する本気度が伝わってくれば、そのような方でも入塾をして頑張っていただいています。
◆CRメンバーが登場する特別講義はなにをやってるの?
――オンラインゲームは、サービス開始から時間が経つにつれて手を出しにくくなるものですからね。さて、実際のサービス内容についても伺いたいのですが、Crazy Raccoonのメンバーを起用した特別講義は、どのような内容なのでしょうか?
久保:CRGSでは月に5回ほど、Crazy Raccoon所属メンバーによる特別指導を実施しています。担当メンバーや回によって内容は異なり、例えばカスタムで様々なモードなどを一緒にプレイすることもあれば、ALGSを振り返るなど競技シーンに紐付いたものもあります。座談会形式では「なぜプロになったのか」や「プロになる前はどんなことをしていたのか」「1日にどれくらい練習していたか」「CRに声をかけてもらった経緯」など、さまざまなトピックを扱っています。
――少し気になるのは、CRGSの応募者はやはりCrazy Raccoonのファンが多いのでしょうか。
久保:もちろんファンの方は多いです。CRGSのサービスとして提供しているマンツーマンレッスンは、Crazy Raccoon所属ではないコーチが担当していますが、そういったファンの方々にも満足いただけているのが良かったですね。
◆採用率はわずか15%―コーチに求める3つの資質
――高い満足度の秘訣はコーチにあると伺いました。実際にコーチになるにはどのような条件が必要なのでしょうか。
朝比奈:『Apex Legends』ではプレデター、『VALORANT』ではイモータル3以上、もしくはそれらと同等の競技経験者が前提条件となっています。競技経験にはコーチやアナリストなども含んでいます。
久保:両タイトルとも、現在コーチ採用に関してはこちらから候補者へお声掛けをしています。まず弊社の社員を受講生に見立てた「デモコーチング」を実施し、合格された方に1ヶ月~2ヶ月間の「コーチ研修」を行い、その後ようやくコーチとして正式採用するかを判断します。
※現在では公募も開始している:https://hrmos.co/pages/bravegroup/jobs/207170000199
――かなり入念にチェックされているんですね。
朝比奈:CRGSとして高いコーチングのクオリティを保つためにも、コーチ候補の方にはしっかりとコーチ研修を受けていただきます。コーチ研修では実際にコーチングを行い、それに対してフィードバックを行ったり、コーチ自身に自分のコーチングを分析してもらったり、弊社の考えるコーチングのメソッドを共有しています。そういったコーチ研修の過程で弊社のコーチングに対する考え方や、コーチとして求める人物像と合わない方もやはりいらっしゃいますので、こちらからのお声掛けにも関わらず大変恐縮なのですが、採用率は15%ほどとなっています。
――人物像としては、どのような方をコーチとして求めているんでしょうか。
朝比奈:前提として「知識量」が求められます。その上で、自分の考えたプレイを構造化して言葉にする「言語化能力」が必要です。そしてそれを伝える「コミュニケーション能力」……この3つが重要ですね。
久保:ゲームの上達は「練習時間 × 練習効率」だと考えています。CRGSのコーチは、時間と効率、両方の軸に対してアプローチするため、練習時間に影響を与える「コミュニケーション能力」や効率に影響を与える「言語化能力」は特に重要ですね。
――採用率にも現れている通り、CRGSのコーチを務められる人材は限られそうですね。
久保:弊社のメソッドが絶対的な正解ではないと思いますが、CRGSのやりたいことや目指しているビジョンに共感いただくことが大事だと考えています。僕らとしては受講生を自走できる状態に導くことや、受講生自身が持つ目標に我々も本気で向き合うこと、ティーチングではなくコーチングを行うことに重きを置いているので、そういった考え方をコーチ研修を通じてコーチ候補の方に伝えています。
――コーチングとティーチングの違いとは、より具体的にどういうものなのでしょうか。
朝比奈:簡潔に説明すると、ティーチングとは回答を与える形で教えることで、コーチングとは受講生自身から回答を導くことです。魚釣りで有名な例え話がありますが、飢えている人に対して「魚の釣り方を教える」のがティーチング、「生き抜く方法を教える」のがコーチングです。なぜ魚を釣る必要があるのか、なぜ魚は釣れるのかなど「Why」をひたすら問い続けます。
ただ受講生に答えを教えるのではなく、受講生の中にあるであろう答えを引き出すことを目的として、コーチが伴走しながらレッスンを行います。短期で成果を出すのであればティーチングでも良いのかもしれませんが、僕らは6ヶ月・12ヶ月と長い時間をかけて受講生にPDCAサイクルを経験してもらい、自身の力で上達する方法を身につけることをゴールと捉えています。
――普遍的な思考力を身に付けるということですね。
久保:ゲームはメタも変化していきます。成長に行き詰まることも少なくありません。そういった時に必要な思考力を養うことが大事です。その思考力が備わっているのが、今活躍しているプロたちだと思います。そういった上位プレイヤーの思考をコーチと一緒に伴走して身につけることがこのサービスの肝ですね。
――コーチ自身の成長も見られそうです。
朝比奈:選考の話に戻りますが、一般的にコーチングについて他者からフィードバックをもらう機会ってなかなか無いんです。なのでこちらのフィードバックがモチベーションに繋がっているという声も、ありがたいことに数多くいただいています。
久保:狭き門をくぐり抜けた方たちだからこそ、CRGSコーチという肩書きも作っていきたいですね。CRGSコーチを辞めた後でも、その肩書きだけで「コーチとして信頼できるな」と箔が付くようなものにしていきたいです。
◆新たに始まる『VALORANT』コース
――『VALORANT』と『Apex Legends』では内容が全く違うものになるのでしょうか?
朝比奈:ゲームの特性上『Apex Legends』は同じ場面が起きにくいですが、『VALORANT』は比較的同じような場面も多いため、テンプレート化がしやすいです。ただ「アセント防衛でキルジョイはBに行け!」みたいなテンプレ的な考え方をコーチが伝えることは僕らのコーチングとは違います。なんのためにやるのか、なぜそちらの選択肢の方がベターなのか、そういった考え方をしっかり言語化し、受講生に考え方を身に着けてもらうことが大切です。
――確かに、最初から答えを提示されても腑に落ちないですよね。
久保:数学とかでも、ただ公式を教えられるより、なぜ公式が成り立っているのかを教えてもらうほうが身に付きやすいですよね。ただゲームにおける定石を詰め込んだり、結果論的な回答だけを教えるサービスではなく、「どうすれば選択肢が増やせるのか」「選択肢の中からどうやってベストな選択肢を選ぶのか」……そういった思考の過程の部分を教えていきたいです。長期的なプランでじっくり受講生と向き合えるCRGSだからこそできることでもあります。
――こうお話を伺っていると、長期的に見た際に日本の競技シーンのレベルを高めてくれるサービスであるような印象も受けます。
朝比奈:今はランクや大会の実績さえあればコーチとして採用されるような現状を課題だと思っています。ちゃんとしたクオリティのコーチングができる方を増やし、そのノウハウも広め、コーチングを通じて上達した人がさらにコーチ側に回っていくような良いサイクルを作ることができれば、長期的に見た際に競技シーンにも良い影響を与えることができると信じています。
――ところで、8月上旬には小・中学生を対象にしたプロゲーマー体験キャンプも実施するそうですね。
久保:これからのeスポーツを支える世代にも少しずつアプローチしたいと考えています。特にフォートナイトにおいては10代半ばから競技の世界やビジネスの世界に飛び込むプレイヤーも多く、自分自身がゲームに対してどのような立場で関わっていきたいかをしっかりと想像できるように、様々なロールモデルと触れ合ってeスポーツのリアルを体験して欲しいと思います。今回はプロにフォーカスした体験ですが、今後はUnreal Editor For Fortnite(※)なども含め、小・中学生の可能性を増やしていきたいですね。
(※)ゲームエンジンを用いてゲームを設計、制作できる無料ツール。作成したゲームは『フォートナイト』上で公開することができる
――では最後に、今後のサービスに向けた意気込みと読者へのメッセージをいただけますか?
久保:お話ししてきた通り、「ゲームにおけるコーチング」を突き詰めていきたいです。よりクオリティの高いコーチングを提供するために我々の取り組んでいることを発信していきたいと思います。マンツーマンレッスンと特別指導によって、どこよりも受講生の本気に、本気で向き合うサービスであると自負しているので、この本気度を感じた方は、是非受講していただきたいです。
朝比奈:コーチという選択肢を目指す方にとってプラスになるような研修やコーチ活動の場をこれからも作っていきたいです。自信を持って提供するCR Gaming Schoolを受けてみて欲しいですし、コーチを目指す方は是非選考に挑戦して欲しいです。
受講生だけでなく、コーチ一人ひとりに寄り添ってしっかりと育成し、ゲームのコーチングに対する“当たり前”を確立していきたいという「CR Gaming School」。ゲームを本気で上達したいと思う方は、挑戦してみる価値があると言えるでしょう。
CRGS公式サイト:https://cr-gs.jp/
CRGS公式Twitter: https://twitter.com/CrazyRaccoonGS
Crazy Raccoon公式サイト:https://crazyraccoon.jp/
株式会社Game & Co:https://gameandco.co.jp/