海外メディアThe Vergeは、先日Steamでの配信が中止になった「Dolphin Emulator」について、ニンテンドーオブアメリカの弁護士がValveへ送ったメールや、Valveの声明を公開し、その実情を報じています。
非公式ゲームキューブ/Wiiエミュレーターが配信前にSteamから削除される
任天堂非公式のゲームキューブ/Wiiエミュレーターである「Dolphin Emulator」のSteam配信が決定したと3月に告知されていましたが、5月にSteamストアページが削除。「Dolphin Emulator」チームは、アメリカのデジタルミレニアム著作権法(DMCA)を理由に任天堂から削除要請が出されたためにSteamリリースは無期限延期すると発表していました。
一方で本件に関して元「Dolphin Emulator」チームの一員であるPierre Bourdon氏は、DMCA削除通知の手続きがとられたのではなく、Valveからニンテンドーオブアメリカに連絡をしてその返事としてニンテンドーオブアメリカから「Dolphin Emulator」が配信されればDMCAに違反する恐れがあると通知されたためにValveは削除を決定したとしていました。
実際の経緯が明らかに
海外メディアThe Vergeは「Dolphin Emulator」チームから提供されたeメールを公開。ニンテンドーオブアメリカの弁護士からValveへ送信された同メールでは、Valveから「Dolphin Emulator」についての情報提供がされたことが記載されており、Bourdon氏の主張は概ね正しかったことが確認できます。
また、一般的にDMCA削除要請の根拠となるデジタルミレニアム著作権法第512条ではなく、第1201条を根拠としてデータの暗号化を回避する手段を提供することになるのが問題だとの指摘もしており、「Dolphin Emulator」チームに異議申し立ての機会を与えることもなくSteamから削除されたのはこの事が理由であったようです。
公開されたメールによると、ニンテンドーオブアメリカの弁護士は「Wiiとゲームキューブのゲームファイル(ROM)は独自の暗号鍵を使用して暗号化されているが、「Dolphin Emulator」は、任天堂の許可なくこれらの暗号鍵を組み込んでROMを復号化することで動作している」としており、こうした機能が「著作権法の下で保護された作品へのアクセスを効果的に制御する技術的手段を回避する不法行為になる」と指摘しています。
仮に第512条が根拠であったとしてもSteamとして何を提供するかはValveに決定権があり、担当者はThe Vergeに対して「Steamをオープンプラットフォームとして運営していますが、それはクリエイターが合法的に配布する権利を持っていることに依拠している」と語りました。
ValveはThe Vergeを通して発表した声明において「Valveは紛争を判断する立場にない」としています。あくまでも「Dolphin Emulator」チームと任天堂の間で紛争が解決しない限りは、ユーザーの混乱を招く可能性があるために配信は許可できないということです。
※ UPDATE(2023/06/03 15:55):本文中の脱字を修正しました。