ゲームや音楽などがミックスした複合エンタテインメントであるこの「DreamHack」の起源は、1990年代初頭、PCを持ち寄ってゲームを遊びまくる「LANパーティ」が行われた事であると言われています。
時は流れて2023年、そんな歴史と伝統あるイベントが遂に日本に上陸しました。5月13日-14日にかけて幕張メッセで行われた「DreamHack Japan 2023 Supported by GALLERIA(以下、DreamHack Japan 2023)は、格闘ゲームにFPSの大会、アイドルやアーティストのライブステージ、ストリーマーによるイベント、プロプレイヤーとのMeet&Greet、コスプレなど、DreamHackの名に恥じない催しが盛りだくさん。コロナ禍が明けて「オフライン」特有の活気を感じられるものとなりました。
そして、DreamHackを語るうえで欠かせないのは、やはりLANパーティことBYOCでしょう。BYOCとはBring Your Own Computer(=自分のPCを持ち寄ろうぜ)の略称であり、各々がPCや周辺機器(それ以外にもさまざまなもの)を持ち込んでゲームをしまくるというものです。本稿では、そんな個性溢れるBYOCエリアの模様をお届けします。
みんなが好きなことをしている空間
筆者は、日本で行われてきた「C4 LAN」の存在こそ知っていたものの、LANパーティ自体を訪れるのは初めてでした。実際どんな雰囲気なのかと恐る恐る足を踏み入れると、確かにみんな「ゲーム」をしている。そういう場所ですし、当たり前ではあるんですが、あまり他人がゲームをしている空間をパブリックな場所で見ることはないのでとても新鮮です。
言うなれば「みんなのゲームデスクが一カ所にテレポート」してきたような印象で、LANパーティにしかない雰囲気がそこにはありました。
『フォートナイト(Fortnite)』を黙々プレイしている方もいれば、友達と一緒に参加しているのか、談笑しながら『Apex Legends』を遊ぶ方、家族連れでノートPCを使って『ロケットリーグ』を楽しむ方、なにやらせっせとガンプラを飾る人まで、多種多様。プレイしているタイトルはFPSやMOBAなどが多い印象です。
LANパーティ常連の方も多いようで、彼らは顔なじみで談笑している姿も多く見られますが、やはり一心不乱にとにかくゲームを遊んでいる人も同じくらい多く、ゲームが捗る空間であるようです。筆者も参加して朝から晩まで積みゲーをとにかく消費したい。取材にかこつけて朝から晩までゲームしたい。余談ですが、DreamHack Japan 2023が行われる前日は『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』の発売日であり、筆者も座席をとって一日中プレイしていれば良かった...。
持ち込んでいるPCも多種多様で、光り輝く「THE GAMING PC」な印象のデスクトップPCから、モバイルモニターとミニPCを組み合わせて比較的動作の軽いゲームを遊ぶ人など、各々の工夫が見られました。
また、PCやモニター、ゲーミングチェアなどはレンタルもできるようで、身軽で参加している方も少なくありません。僅かではありますが家庭用ゲーム機を持ち込んでいる方も。本当に自由です。
やはり魅力的なのは「なにをしていても良い」という空間。いろんなゲームをいろんな人が自由に遊んでいる空間はとても包容力のあるものでした。
ただ、国内外含め多くのLANパーティは夜通しプレイできるものが多い一方で、今回のDreamHack Japan 2023のBYOCは21:30には撤収する必要がありました。やや残念ポイントですが、他のLANパーティなどではホテルで休息を取る方もいるようです。
個性豊かな楽しみ方
ここからは、特に異彩を放っていた...もとい注目を集めていた参加者をピックアップしてお届けします。念のためお伝えすると、彼らの装いがスタンダードというわけではありません。カジュアルに楽しむもよし、彼らのように個性を出すもよし、スタイルは参加者次第です。
こちらは、傑木優さん(@sugurugi )のデスク。「ここはフリマか?」と思わず二度見してしまいます。こちらには、ゲーミングブランド「VAXEE」のマウスパッド&マウス、チーム「DeToNator」の代表江尻勝氏の著書「DeToNatorは革命を起こさない ゲームビジネスで世界を目指す」、キャスターによる番組「岸大河・OooDaのスタングレネード」のステッカー、k4senさんと『アンダーテイル』のサンズが飾られていました。
これらは「リスペクトしているモノを集めた」ということで、LANパーティの懐の深さがうかがい知れます。
彼曰く、黙々とゲームするのも、このようなデスクを作るのも「全部正しい」そうです。
LANパーティ、奥深い。
一方こちらは、光るゲーミング人間ことLEEKさん(@lee_k_do )さんのデスク。モバイルモニターを活用してゲーム環境自体はコンパクトに収まっているものの、光り輝くガンダムのプラモデルが特徴的です。なんといってもご本人がよく光っています。
今回はDreamHack Japanということで、余所行きを意識して有名な「機動戦士ガンダム」(いわゆるファースト)と、「機動戦士ガンダム 水星の魔女」からエアリアルのプラモデルを採用したとのこと。
他のLANパーティ常連さん曰く、今回のDreamHack Japanは一回目ということもあってか、派手目な参加者は少なく、やや控えめな印象だそうです。LANパーティのポテンシャルはまだ発揮されていないらしい。まだやれる。
こちらは、Ratataさん(@ratata_ratata)。いや、なぜ与謝野晶子。これもまたLANパーティ。彼からはローグライム・リズムゲーム『Crypt of the NecroDancer』を激推しされました。やってみます。
今回ピックアップさせていただいた方々はLANパーティの常連であり、彼らとお話していると次々と顔見知りが「○○さん!どうも!」といった具合で集まってきました。コミュニティとしての厚さを感じざるを得ません。新参者である筆者の取材にも快く応じてくれ、掲載も「どうぞどうぞ、フリー素材なので!」と温かく承諾していただきました(ありがとうございます!)。
彼らのような個性全開な楽しみ方も、黙々と持ち込んだゲームをひたすらプレイするのも、全部自由で全部正しい。それが今回のDreamHack Japan 2023におけるBYOCエリアという場所なのかもしれません。
そして、ゲーム自体でも、競技シーンでも、そこから派生するコミュニティでも、みんなに共通するのは「ゲームが好き」ということ。ゲームが好きな人が集まった温かい空間であることが伝わってきました。次のDreamHack JapanのBYOCエリアでは筆者も席を取って遊びに行くので待っていてください。