『VALORANT』の国内競技シーン「VALORANT Challengers Japan 2023 Split 2 Playoff Day2」において、決勝への1枠をかけた「SCARZ vs Jadeite」が行われ、接戦の末マップスコア3-1でJadeiteが勝利。アセンショントーナメントをかけたグランドファイナルへの出場を決めました。
JadeiteはSplit 1のOpen Qualifier(オープン予選)ではSCARZに敗北しMain Stageへの出場を阻まれ、Split 2のMain Stageでも敗北。これまで勝利していない相手との戦いでした。
今回は、そんな因縁の対決を制したJadeite(以下、JDT)から、IGLを担うArt選手とBullcoコーチに実施されたメディア合同インタビューの模様をお届けします。
オーディンは僕の撃ち合いが2倍強くなる武器です(笑)
――勝利おめでとうございます。怒濤の強さを見せ続けていますが、今回の試合の感想・勝因を教えてください。
Art:僕らのチームカラーはフィジカルに自信があるところですが、これまでは緊張するとうまく力を出せませんでした。今回はみんなが緊張と友達になることができましたし、僕自身もマップを重ねるごとにエンジンがかかってきました。緊張が自分を強くしてくれたと思います。
Bullco:チームに大会に慣れている選手もいれば、iZuやMutoなど、Jadeiteが初所属という経験が少ないプレイヤーもいるなか、どれほど緊張せずに自分たちのパフォーマンスを出せるのかが課題でした。リーグ戦では7戦を経験し、試合数を重ねるほど練習と同じプレイができるようになり、むしろそれよりも良いプレイが出せるシーンも増え、大会を楽しむことができました。今回の試合は実力が出せたと思います。
――Main Stageに至るまでさまざまなチームとの戦いがありました。それを経て、チームとしてどのような成長ができましたか?
Art:緊張に慣れてきて、“いつも通り”ができるようになったのが大きな成長です。僕は2シーズンを同じチームでプレイするのが初めてなのですが、Jadeiteは僕がやりたいことを尊重してくれるので、戦術的な面もパワーアップしています。あとは、毎日ケンカしてるんで(笑)、チームメイトはお互いを理解できていると思います。いろんな意味で成長できたかなと。
――試合のなかでのコールはArt選手のものが多いんでしょうか。
Art:メンバーから「ここで勝負したい」みたいな意見も貰いますが、基本は僕ですね。かなり割合で言うと、8割くらいを僕がコールしていますね。
――Art選手といえばオーディンですが、オーディンを考慮して配置や戦術を変えることはありますか?
Art:それは特にありません。僕はオーディンを、ファントムやヴァンダルと同じような普通の武器だと思っています。ただ、僕の撃ち合いが2倍強くなる武器です(笑)
――JDTとして初のオフライン進出ですが、意気込みをお願いします。
Art:僕らのチームは決してオフライン慣れしている選手が多いわけではありません。僕もイベントマッチに出場したくらいなので、未知の世界です。それまでに実力を確固たるものにして臨めれば、また緊張と良い付き合いができると思うので、精一杯練習したいと思います。
Bullco:チームとしてはもちろんですが、『VALORANT』においてオフラインを初めて経験する選手が多く、それは私も同じです。“普段通り”を目指しつつも、同規模の環境で練習することはできないので、大会当日にどれほど早く慣れることができるか、どれほどオフラインに似ている環境で練習できるかが大切だと思っています。また、緊張は私を含めて誰もがするものですので、どう向き合うかです。良い結果を見せたいですね。
――オフラインへの緊張に対してどのように対策を講じますか?
Art:緊張は自信の裏返しです。表が緊張、裏が自信……みたいな。練習量を増やして自信をつけることに限ると思います。実際の環境と同じように、例えばイヤホンやデバイス、フレームレートの固定など、オフラインに近い環境でたくさん練習して自信をつけたいです。
Bullco:緊張する人もいれば、会場を楽しめる人もいると思います。一番は、自分たちができる限り同じ環境で練習をすることです。イヤホン、ヘッドセットをつけて練習する時間を増やしたり、オフラインでもできるルーティンや練習を新しく考えたりですね。
◆鍵はコンセプトを見つけること
――これまで勝てなかったSCARZとの戦いでしたが、とても良い内容だったように思います。SCARZに対する“答え”は見つけられましたか。
Art:2回の敗北を通じて、SCARZはコンセプト通りにプレイしてくるチームだと分かっていたので、そのコンセプトを見つけることが鍵でした。事前情報などから相手のやりたいことやコンセプトを探し出すことが、SCARZへの答えでした。試合中も相手のやりたいことを見つけたら、その都度コールや修正をする。今回はそれがよくできたと思います。
Bullco:Split 1Open QualifierでもSCARZに対抗するのは難しかったです。“相手のコンセプトを見つけること”はコーチの大きな役割ですが、Split 2 Main Stageでは上手くできませんでした。対して今回は、動き方やどこに隙があるかなどを理解し、選手たちに伝えられましたね。選手各々もそのコンセプトを探し、共有し、ラウンド内で修正できたのが大きな勝因でした。
――JDTは勝っている場面にタイムアウトを取ることが多い印象です。どのような意図があるのでしょうか?
Bullco:そもそも僕らは他のチームと比べてあまりタイムアウトを取らない方だと思います。コーチが伝えるべき内容を、インゲームのコールで共有できていることが多いからです。noppoさんやEgi(アナリスト)さんの意見に随時メモを取り、取るタイミングとしては、選手たちが対策などに迷っている時を選びました。
――また、全体的な戦術は、どのように組み立てているのでしょうか。
Art:僕らのチームは最強のフィジカルを持ったメンバーが揃っています。なので考えることはあんまりなくて、試合中になんでもできるメンバーだし、僕のIGLもなにが来ても対応できる自信があるので、適当な感じでプレイしています(笑)。試合によって変わると思います。
――現在のチームの完成度をどの程度だと評価していますか?
Art:70点~80点ですね。まだ上振れ下振れが大きいです。チームのエースであるiZuを起点としているなか、彼自身もそれを自覚していて、他のメンバーも緊張などによってぶれる部分があるので、そこが他チームとの差だと感じます。下振れを減らせられれば、100点になると思います。Bullco:僕は80~90だと思っていて、理由についてはArtくんが答えた通りです。刺さる試合では大差で勝ったり、負ける試合は大きく落としたりするシーンが多いので、安定感を持つことができれば100点になれるかなと思います。
――そのためにどんな練習を積んでいきますか?
Art:日頃のスクリムでチームの動きを練習しつつ、個人のフィジカルを上げたり、得意なところを見つけることですかね。あとは相手への対策がもっと上手くできるようになったら、もっと良いチームになると思います。
――JDTは突然強くなったような印象がありますが、その要因はどこにあるのでしょうか。
Bullco:いきなり上昇したチームに見えるかもしれませんが、Split 1でも強かったんです(笑)。お見せすることができませんでしたが。大きな要因としては、2022年と違ってArtくんとiZuくんがいることですね。
Art:今のチームはバランスが良いと思っています。僕は自信を最強のIGLだと思っているので、僕がまず入ったこと(笑)。そして、みんなフィジカルが強くて、それぞれの役割がハマっているからですね。
――最強のIGLだと自負できる要因はどこにありますか?
Art:IGLのなかでも自分のフィジカルを大事にしているところです。味方が苦しいなかでも破壊できる力を持っていると思います。もう一つは、大会の動画などを見て脳トレをする時間を大事にしているところです。自分たちのフィードバックなどを含めていろいろ考えるので、暇な時間があれば動画を見ています。そもそも見るのが好きですね。
――最後にファンへのメッセージと大阪への意気込みをお願いします。
Art:本当にいつもたくさんの応援ありがとうございます。応援やサポートがあって僕らはプレイすることができていて、それらを力に変えて戦うのが選手だと思っています。これがスタート......というわけではありませんが、僕らの目標は日本一位になったその先にあります。これからも応援してくれると嬉しいです。よろしくお願いします。
Bullco:Artくんが言った通り、これまでファンの皆さんの応援と、チームのサポートがなければここまで来ることもできなかったと思います。Split 1で悔しい思いをした際にファンからのメッセージを貰い、それを力に変えることができたから、Split 2ではここまで来ることができました。大阪でも良い結果を残せるように頑張るので、引き続き応援よろしくお願いします。
因縁の戦いを制したJadeiteは、6月4日(日)にエディオンアリーナ大阪にて行われる「VALORANT Challengers Japan 2023 Split 2 - Playoff Finals」に進出。アセンショントーナメントへの座をかけた戦いに挑みます。