建設業界からの期待の目がeスポーツプレイヤーを始めとするゲーマーたちへと注がれ始めています。一般社団法人運輸デジタルビジネス協議会と千葉房総技能センターが10月26日に初開催した、「e建機チャレンジ大会」もそういった動きの一つのようです。
産経新聞の報じた記事によると、本大会は2人のオペレーターと監督からなる3人組のチームで東京・六本木にあるビル、六本木グランドタワーの1室に設置されたモニターを見ながら、千葉県大多喜町にある同センターの重機訓練場に用意された無人のパワーショベルとダンプカーを操作し、土砂を運ぶタイムを競い合うというもの。プロのeスポーツプレイヤーや大学のeスポーツサークル所属者といった面々も招かれました。
こういったイベントが開催される背景には、慢性的な若手技能者不足の解消につなげたいという思いが含まれるといいます。eスポーツプレイヤーによるジョイスティックなどゲームコントローラーの高度な操作技術が、油圧ショベルやクレーンなど建設機械の遠隔操作に生かせるのではないかと期待されています。
本大会は競技形式を取りつつも、遠隔操縦建機の社会実装化、および災害救助・復旧支援の可能性へのチャレンジや競技結果次第で行政組織に向けての提案へと繋げること、企業による防災・建設関連の自社の技術、製品等の紹介を目的としています。優秀チームは、11月の国土交通省主催遠隔施工実演会への参会が依頼されるとのことです。
産経新聞によると、伊藤忠商事など大会スポンサー各社は「eスポーツプレイヤーの技術は建設機械の遠隔操縦に生かせることを確認できた」と声を揃えたそうです。テレビ朝日によるeスポーツチーム関係者・中村有佑さんへのインタビューで「ああ、こんなに簡単に重機を動かせるんだと感動しました。重機を遠隔で動かす能力を買ってくれるなら、実際に働きたいと思う」と語られるなど、ゲームプレイヤー側から見ても選手のセカンドキャリアや、隠れた才能を発揮する場となること期待されます。
一方で、建設機械を動かすためには労働安全衛生法に基づく運転技能講習を修了する必要があり、遠隔操作についてのルールや適切な講習もないなど、制度やルール回りが明確化されていないという課題も残されています。国交省や厚生労働省などは、既に建設機械を安全に遠隔操作するためのルールの明確化や、新しい資格作りの検討に入っているといいます。
11月21日には国土交通省による遠隔施工の実演会「施工DXチャレンジ2022」が開催されたほか、Game*Sparkでもインタビューを行った建設業界から活躍するeスポーツチームの存在など、建設業界とeスポーツとの関わりは更なる発展を見せています。建設業界にとっては、重労働のイメージを今や子供のあこがれの職業となったeスポーツの起用で払拭し若年技術者を確保する礎として、eスポーツプレイヤーにとっては新しい才能の役立て方として、両者の繋がりへの期待は高まる一方です。