唐突ですが筆者は「音ゲー」や「リズムゲーム」と呼ばれるジャンルが苦手です。ノーツの流れを覚えることが苦手で、ボタンが多い作品だと頭が混乱してまったく追いつけません。比較的シンプルに遊べる『太鼓の達人』すら、難易度「ふつう」がギリギリ限界というほどです。しかし、『リズム天国』シリーズだけは最初から最後までとことん楽しむことができました。
『リズム天国』シリーズは、任天堂が2006年より展開している音楽ゲームシリーズです。携帯ゲーム機を中心にこれまで4作品が発売されています。根強いファンも多い同シリーズですが、本稿では本作が音ゲーが苦手なゲーマーでも楽しめる本作ならではの魅力に迫ります。
Aボタンを押すだけ、タッチするだけ!簡単操作でリズムにノリノリ
『リズム天国』シリーズは、これまでGBAの『リズム天国』DSの『リズム天国 ゴールド』Wiiの『みんなのリズム天国』3DSの『リズム天国 ザ・ベスト+』と携帯機を中心に発売されています。筆者は2人同時プレイにも対応したGBA版ベースのアーケード版にも思い入れがあります。8拍目でボタンを押しておばけを射抜く「しろいおばけ」がお気に入りでした。
本作の特徴は、削ぎ落とされたシンプルな操作で簡単にリズムゲームを楽しめること。GBA版では少し操作ボタンが多いゲームもありますが、DS『ゴールド』では本体を横向きに持って右画面をタッチもしくは弾き、『みんなの』ではAボタンかABボタン同時押しというシンプルな操作形態でした。Wiiのゲームはリモコンを振るという動きを使うものが多いですが、『みんなの』はシンプルさを守っていたのが好印象です。
しかし、操作が簡単だからといってゲーム自体は簡単ではありません。フェイントを仕掛けてきたり、視覚で惑わせてきたりとミスを誘う仕掛けが盛りだくさんであるため、常に緊張感が途絶えません。それを乗り越えたときはリズムにノリノリであることも相まって非常に気持ちいいです。
とはいえ、かなり難しいゲームがあるのも事実。そんなときにはキッサ店のマスターにお願いすれば「平凡」評価でクリアしたことにしてくれます。基本的に開放されるリズムゲームは1つずつなので、クリアできなくても詰まらないような仕様は元々リズム感のない筆者には嬉しかったです。
リズムゲームを5つクリアするごとに開放されるのが、「リミックス」ステージ。いわゆるボスステージ的な構成になっており、いままで挑んできたリズムゲームをごちゃまぜにした総復習編となっています。新曲にあわせてかっこよくリミックスされたリズムゲームたちは胸が熱くなります。
第1作目の時点からクセになるボーカル曲が収録されていることも特徴です。GBA「ザ☆ぼんおどり」の“これぞメイドインジャパン”やDS「アイドル」の“か~もね!”は特に耳に残りますね。
リズムゲームの終了時には毎回「ハイレベル」「平凡」「やりなおし」といった評価が付けられます。「平凡」以上であれば次のステージに進めるので、根本的にリズム感のない筆者でも楽しめました。また、評価は単なる成功/ミス回数ではなく、変則的になるシーンで対応できたかなどの点も評価されます。成功回数が多くてもテンポが変わるところに対応できなかったら「平凡」評価にされてしまう……なんてこともしばしばあります。
また、やりこみ要素が豊富なのも魅力です。「ハイレベル」を取ればメダルを獲得してリズムおもちゃやエンドレスゲームズといった収集できるミニゲームが開放されていきます。また、時折出現して3回まで挑戦できる「パーフェクトチャレンジ」を成功させれば、そのリズムゲームにまつわる文章やアイテムを入手できます。一通りクリアするだけでもボリュームがありますが、やりこみ甲斐もある奥深い作品なのです。
コミカルさやキャラクターの可愛さも特筆すべき点です。アラビアンな曲にあわせて野菜のひげ抜きをするGBAの「リズム脱毛」はなぜか野菜に濃い顔がついておりかなりインパクトがあります。
Wii『みんなの』以降は据え置き機でキャラクターがドット絵からイラストになったことで、人間キャラが非常に可愛らしく描かれます。「Wデート」は男の子も女の子もどちらも可愛らしい顔です。有名なところでは、「図書ガールズ」や「だいスキRAP」の女性キャラも可愛いですね。
さて、シリーズならではの魅力を多く持つ『リズム天国』シリーズですが、残念ながら本記事執筆時点で2015年に発売した3DSの『リズム天国 ザ・ベスト+』を最後に7年以上もシリーズ作が発売されていない状態なのです。本作の楽曲やプロデューサーを担当するつんく♂氏は自身のTwitterにて何度も「新作を作りたい」という旨の発言をしているほか、ニンテンドースイッチ向け新作がもし発売された際のアイデアを募っておりかなり意欲を感じます。
アイデア募集のツイートは3.2万いいね、1.7万リツイートとシリーズが出ていない今でも非常に注目を集めるタイトルであることがわかります。新作を望む人はかなり多そうですから、ぜひともニンテンドースイッチ向けに発売してほしい……というのがファンの願いではないでしょうか。
新作が出ない…そんな中『リズ天』フォロワーが続々出現
しかし最近、そんな『リズム天国』シリーズの後を追うような作品が続々と発表されています。最近Twitterで話題になったのは、日本コロムビアが発売する『すみっコぐらし みんなでリズムパーティ』。
「隅っこが落ち着く」というキュートなキャラクター「すみっコぐらし」を元にしたリズムゲームです。ゲームプレイとしてはリズムに合わせてJoy-Conを振って遊ぶことができるほか、4人同時プレイも可能であるようです。
MAGES.が発売する『たいみんぐぅ~』は最も『リズム天国』に近しいテイストの作品です。思わず吹き出しそうなシュールなシチュエーションやプレイヤーキャラの頭上に「あなた」と書かれている点など影響が色濃く現れています。
インディー開発者が開発する『Melatonin』は『リズム天国』や『たいみんぐぅ~』とは打って変わってメルヘンで淡いピンクのアートが特徴。SNSやクレーンゲーム、VRゲームといった今どきの若者らしいテーマのステージがプレイできそうなのも魅力的です。
完全にフォロワーというわけではないのですが、リズムローグライトACT『Crypt of the NecroDancer』のスピンオフである『Rift of the Necrodancer』にも似たパートが存在する模様。失敗して睨まれるのは『リズム天国』でもお約束ですね。
Steamにて早期アクセス中の『Rhythm Doctor』も『リズム天国』の影響を感じられます。本作はさまざまな妨害に耐えながら特定のリズムを刻むことで患者を治療していきます。ユーモアあふれる仕掛けが満載の作品で、最近日本語にも対応したためぜひおすすめしたい1作です。
このように、最近発売もしくは発表された作品にも『リズム天国』の影響を感じる作品が多く存在します。どの作品もそれぞれの魅力を抱えていますが、それはそれとして本家新作が発売されてほしいというのも正直な心情です。
どうかニンテンドースイッチ(もしくは任天堂の次世代ハード)で『リズム天国』新作が発売され、カジュアルでユニークな仕掛けのあるリズムゲームがもっと登場したら筆者はとても嬉しいです。