視聴者考案の技が『スーパーマリオワールド』RTAを大きく変えた。「nibnaclip」関係者座談会【特集】

2022年、『スーパーマリオワールド』のRTAを大きく変えたのは、視聴者考案のとある技でした。その技の発見から実用に深く携わった関係者4名の座談会をお届けします。

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視聴者考案の技が『スーパーマリオワールド』RTAを大きく変えた。「nibnaclip」関係者座談会【特集】
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1990年11月21日にスーパーファミコンと同時に任天堂から発売された横スクロールアクションゲーム『スーパーマリオワールド(以下、『マリワ』)』。発売から32年が経とうとしている本作ですが、RTA界でもその人気は未だ衰える気配がありません。特に、日本人走者の『マリワ』RTAコミュニティは世界的に見ても非常に活発であり、同コミュニティのTwitchチャンネルではWeekly Race(毎週の並走会)も行われています。

2021年末には「RTA in Japan Winter 2021(以下、RiJW2021)」にて、全ゴールクリアを目指す「96Exit」の4人レースが採用され、近年の研究の集大成が大舞台で披露された『マリワ』RTA。同RTAのいちファンである筆者としては、2022年以降の『マリワ』界の盛り上がりは多少の落ち着きを見せるかと個人的に予想していましたが、その予想を180度覆すような大発見が起こったのは、1月末のことでした。

nibnaclip」と名付けられたその技は、とあるコースの隠しゴールクリアを含む複数のカテゴリーで猛威を振るい、数々の世界記録更新に貢献しました。本記事では、この技の発見から実用までのプロセスに深く携わった4名の『マリワ』RTA関係者をお呼びして、「nibnaclip」について熱く語っていただいた内容を座談会形式でお届けします。

座談会参加者(敬称略):

nibnac:「nibnaclip」考案者。発見当時は『マリワ』RTA走者ではなく、視聴者サイド。
にぃく~:3年ほどの視聴期間を経て2020年3月に『マリワ』走者デビュー。多くのカテゴリーで世界上位の記録を持つ実力者。
ロコンはかせ:2020年9月に開催された『マリワ』RTA新人大会を見て興味を持ち、翌月走者デビュー。RiJW2021では解説担当。
oosui:「スーパーファミコン Nintendo Switch Online」での『マリワ』配信をきっかけに、2020年8月に走者デビュー。複数のカテゴリーで数々の世界記録を樹立してきたトッププレイヤーのひとり。

『マリワ』RTAを変えた「nibnaclip」とは

──はじめに「nibnaclip」とは何なのか、ご説明お願いします。

ロコンはかせ:ワールド7「まおうクッパのたに」のコース2で用いられる短縮技のことです。このステージの2部屋目では、黄色い動く壁(英名:Sandbar)が絶えず上下しており、マリオが挟まれないように壁の運動の周期に合わせて進む必要があります。RTAでは、待ち時間を無くすために壁の内部に侵入するテクニックが使われます。

──「まおうクッパのたに」のコース2といえば、隠しゴールすることで「クッパのしろうらぐち」方面への道が開かれるステージですね。

ロコンはかせ:従来は「床抜け」や「天井抜け」と呼ばれる技を使って壁抜けしていました。これらは全て決めると18秒以上の短縮になりますが、入力猶予が1~4フレーム(1フレーム=約1/60秒)しかない高難度技でした。これに対して、今年1月に見つかった「nibnaclip」を使うと、かつての難しい技を完璧に決めるのとほぼ変わらないタイムを安定して出すことができます。

──「nibnaclip」は、従来の「床抜け」や「天井抜け」とどのように違うのですか?

ロコンはかせ:「床抜け」や「天井抜け」はアイテムを使わずに行う技ですが、「nibnaclip」を行うには「カギ」が必要です。まずは最初の部屋から甲羅を持ってきて、「ヨッシーの翼」の入ったブロックの近くでうまく上に投げます。成功するとブロックが左側に増殖して、中からカギを取得できるんですね。このカギを活用して、壁や天井を計5回抜けるのが「nibnaclip」という技です。

──カギを使うことで壁抜けが簡単になるのですね。

nibnac:「nibnacip」では、しゃがんだ状態でカギに乗ります。動く壁に挟まれる直前にカギを持つとマリオが立ち姿勢に戻ろうとするのですが、戻れるだけの隙間がないので床や天井をするっと抜けることになります。

ロコンはかせ:カギを使うと入力猶予が0.1秒以上は確保できるので、ある程度練習すれば、上位プレイヤーなら「決めて当たり前」レベルの成功率まで持っていけますね。発見当初のセットアップだと全体的に操作が忙しく、綺麗に最後まで決めることが難しかったのですが、研究が進むにつれてカギの置き方などが洗練されて、より簡単になりました。

──カギを入手するための「ブロック増殖」はどの程度難しいのでしょうか?

ロコンはかせブロックは色んな方向に増殖し得るのですが、左上か真左に増殖させることができればその中身がカギになります。そのためには、マントマリオの場合、特定の3フレームで甲羅の上投げを狙うことになります。ただし毎回50%の運が絡みます。

oosui:50%の運ゲーに負けた場合は、リトライすることも可能です。僕のやり方だと、4回目のトライまでにカギを入手できれば、動く壁の最速周期にタイムロスなく間に合います。

──ちなみに、ブロック増殖に失敗した場合はどうなりますか?

ロコンはかせ:床抜けなどを使わない通常のルートと同じタイムで進むしか無くなってしまいますね。

「nibnaclip」は如何にして発見されたか

──「nibnaclip」発見の経緯を教えてください。

にぃく~:きっかけとなったのは2021年2月に行われた「All Castles,Small Only(全城クリア、チビマリオ縛り)」並走会を見たことです。このカテゴリーには難しい技がたくさんあるので、タイム以外に「技術点」という要素が設けられて、その点数も競われたんですね。

──「技術点」ですか……。なかなかユニークなシステムですね。

にぃく~:この技術点を稼ぐために、参加者のひとりであるhiroさんがカギを使って「まおうクッパのたに」のコース2で面白いことをやろうとしているのを見ていたんですね。hiroさん自身は海外プレイヤーが数年前にアップロードした動画を参考に練習していたようです。今年の1月に同じカテゴリーのレースが再び開催されたので、そこで自分でも真似してみようかと。その様子を見ていたのがnibnacさんです。

nibnac:にぃく~さんの練習配信に着想を得て、カギを使うことで従来の「床抜け」「天井抜け」を、新しい抜け方に置き換えられないか、自分なりに考えてみました。3日くらい時間をかけて、壁抜けしやすい座標を見つけて今の方法に近いものを確立できました。

──カギを利用するというルートが今年に入るまで発見されずに埋もれていた要因は何でしょうか?

にぃく~:1部屋目において、甲羅回収のために遅くなってしまうのがネックだったのだと思います。タイムを落としてまで甲羅を持っていくという発想がなかなか出なかったのではないでしょうか。

nibnac:自力で発見した内容は、可能であれば自分のランの中で決めて完走記録として公開したかったのですが、当時は視聴者サイドだったこともあり、実力的に無理でした。そこで、当時個人的に親交の深かったロコンはかせさんとにぃく~さんに動画を共有して、バトンタッチしました。

ロコンはかせ:動画が送られてきた当初は、正直なところ眉唾物だと思っていました(笑)。過去に誰かが検証した没ネタを、新しい短縮案ではないかと再提案されるのはよくあることなので。しばらく放置していたのですが、にぃく~さんからDMが来て、この技は革命的なんじゃないかと。それを受けて自分でもやってみたら「あれ、この技やばいな」と驚きまして。

──動画を見てからその凄さに気付くまでに時間差があったのですね。

にぃく~:これは『マリワ』RTAの歴史に残る技になるなと直感しましたね。名前については、nibnacさんの名前を確実に残したいという思いから、「nibnaclip」という名前をロコンはかせさんが名付けました。

ロコンはかせ:その後は全体的な動きを改良して、以前のルートと比べたメリット・デメリットを整理したうえで自分のTwitch配信内で発表しました。それが今年の1月29日のことですね。

「nibnaclip」が『マリワ』RTAに与えたインパクト

──「nibnaclip」を最初に実用したのは誰ですか?

ロコンはかせ:私が知る限りでは、つあけさんという日本の走者です。発表を受けてすぐに「nibnaclip」を練習して取り入れたようです。実際に記録が出たことで、『マリワ』RTAコミュニティに激震が走りましたね。

──その後「No Starworld」の世界記録を更新したのがoosuiさんでした。「nibnaclip」の練習はどのタイミングで始めましたか?

oosui:つあけさんが記録を出したのを見てからですね。「これは革命技なんだ」とはっきり認識して、練習を始めました。2月7日に32分31秒というタイムを出して、記録を1秒更新しました。

──他のカテゴリーでも「nibnaclip」を取り入れた世界記録が次々と生まれましたよね。

oosui:「96Exit」では僕が1時間21分17秒という記録を、「No Cape, No Starworld」ではCalco2が34分11秒という記録を最近出しました。

──「nibnaclip」発見の前後でどのように走り方を変えましたか?

oosui:ランの前半でしっかり攻められるようになりましたね。以前は終盤に「床抜け(4フレーム)」と2度の「天井抜け(1フレーム&2フレーム)」が控えていたので、いかに「床天天」チャレンジの試行回数を多く確保するかを考えていました。そのため、あまりリスキーなことをせず安定重視で走ることが重要だったんですね。「nibnaclip」がある現在では、終盤の大きなリセットポイントが無くなったので、序盤からハイリスクローリターンな技を果敢に狙うことができるようになりました。

──「床天天」時代に多くのランを犠牲にされていた頃のことは、いち視聴者としても鮮明に覚えています。

oosui:「床天天」時代は苦しかったですね。3か月ほどの間、毎日1本は「床天天」で記録を潰しているような状況だったので。「nibnaclip」が生まれる1か月前に「床天天」を決めて「No Starworld」で32分32秒という世界記録を出したのですが、当時は「この記録は誰にも抜かれないだろう」という自信がありました。「床抜け」だけなら多くの走者が取り入れていますが、「床天天」を全て決めて記録を出したのは僕とまいばさん(32分35秒)だけだったので。

──「nibnaclip」がもたらした変化について、やはり複雑な気持ちもありますか?最後に、今後の『マリワ』RTAシーンの展望や「nibnaclip」についての総合的な印象などお聞かせください。

ロコンはかせ:発見自体はもちろん素晴らしいのですが、「床抜け」「天井抜け」時代の方が好きだったと思うことも正直あります。まいばさんとLuiが繰り広げた「96Exit Tournament Grand Finals」のような接戦では、逆転が起こり得る状況で「床抜け」を仕掛けるかどうか、そういった駆け引きが手に汗握るものでした。「nibnaclip」の登場によって、レースの盛り上がりポイントが変わってしまったのは少し寂しいですね。

oosui:はじめは複雑でしたが、「nibnaclip」のおかげで他の新たなテクニックにも挑戦するようになり、更なる記録を狙うことが出来ています。結果的に長いこと『マリワ』RTAを楽しめているので、改めて考えると「nibnaclip」が見つかって良かったなと思います。現在は32分25秒というタイムを目標に頑張っています。

──本日はありがとうございました。

※本記事の画像は、【スーパーマリオワールドRTA!新世界記録!!】No Starworld 32:26.744より引用しました。


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※UPDATE(2022/10/26 16:38):「nibnaclip」の名付けに関するコメントを一部修正しました。

《とんこつ@Game*Spark》

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