株式会社ポケモンは、8月8日から8月14日にかけて横浜市みなとみらいにて、「ポケモンワールドチャンピオンシップス2023(ポケモンWCS)」と周辺イベント「ポケモンワールドチャンピオンシップス2023横浜みなとみらいイベント(WCS横浜みなとみらいイベント)」を開催しました。
今回訪れたのは8月11日。この日はパシフィコ横浜にて『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』、『ポケモンカードゲーム』、『ポケモン GO』、『ポケモンユナイト』の世界大会「ポケモンワールドチャンピオンシップス2023」のDay1が開催されていました。周辺では大会を記念した様々なイベントも行われており、まるで桜木町駅、みなとみらい駅周辺の街全体をポケモンがジャックしているようなお祭り状態となっていました。
筆者は『ポケットモンスター 赤・緑』直撃世代であり、幼少の頃からポケモンに魅了されてたファンの一人です。しかし。これまでポケモンWCSは海外で行われているイベントであり、我々日本人にとっては縁遠いものとなっていました。それこそYouTubeなどの配信でしか追いかけることができず、参加した人を羨ましく思うばかり…。
そんな憧れのポケモンWCSがいよいよ国内開催ということで、居ても立っても居られず現地に突撃!本記事では、その様子をお届けします。
◆14年もの歴史があるポケモンWCS、実は日本では初開催
前述したようにポケモンWCSは、今回が日本初開催。2009年の初開催から2019年までの間、アメリカの都市を中心に開催されてきたため、あまり日本での認知度は高くなかったと言えます。
2019年と2020年はコロナ禍の影響もあり2度の中止に。2022年には初めてアメリカ以外の都市、ロンドンで開催されるも、『ポケットモンスター ソード・シールド』を使った世界大会はこれが最初で最後となってしまいました。
そんなロンドン大会の閉会式にて、次回のポケモンWCSが日本で開催されるという発表が!日本国内に住むポケモンファンにとって、まさに長年の夢が叶った瞬間だったと言っても過言ではないでしょう。あの興奮から早1年が過ぎ、ついにポケモンWCSが横浜で開催されるに至ったのです。
◆和太鼓演奏など日本らしい演出!さらにポケモン新情報が予告された注目の開会式
筆者が訪れた開催初日。入場口にはたくさんのイベントスタッフがアーチを作り、「いぇーーーーい!」と元気よくハイタッチでお出迎えしてくれました。会場内には日本人のみならず、様々な国から訪れている選手やお客さんの姿も。日本ではないどこか異国のゲームイベントに参加しているような不思議な感覚です。
場内のBGMにはQueenの「I Want To Break Free」などのロックの名曲や、EDM、ヒップホップなどが流れており、さながら音楽フェスにやってきたかのような雰囲気もありました。
ポケモンWCSといえばステージのデザインも見どころであり、毎回開催国や地域の特色を表したものとなっているのが特徴です。今回は日本をイメージした和風なステージデザインと、背景には日本の顔ともいえる富士山や、イベントの開催地域の横浜の景色が描かれた豪華なものとなっていました。
イベント開始時刻である午前9時にあわせてカウントダウンが始まると、場内は大興奮。本当に多くの人がこの日を楽しみにしていたんだなと実感します。
メインステージに株式会社ポケモン 代表取締役社長・最高経営責任者の石原恒和氏が登場すると、会場はよりヒートアップ!
石原氏は、『ポケットモンスター』シリーズが始まってから25年以上経ち、はじめて日本の横浜にて世界大会を開催できることに対して感謝するとコメント。さらに1年を通して予選を勝ち抜いてきた選手達や、彼らを支えてきた家族・友人も労います。さらに最終日に行われる閉会式には、ポケモン最新情報があるとの予告も。
開会式はこれまで海外で開催されてきたポケモンWCSの雰囲気をそのまま日本にもってきた感じがあり、ポケモンファンとしては非常に嬉しいものがありました。こういったイベントが日本で開催されるときは、どこか日本風にアレンジが加えられたりだとか、規模が縮小されていたりなどして、イベント名は同じだけど全然違うものとなってしまっていることも多いからです。
しかしポケモンWCSはそういったことはなく、「日本のポケモンファンにも本場の空気を味わってほしい」という意気込みが感じられました。ああ、あのポケモンWCSが本当に日本で開催されているんだと感慨深いものがあります。
◆対戦で白熱して、観戦で盛り上がる!ポケモンWCSの会場内を探索
今回の大会には50カ国から集まった選手が総勢2,000人が参加!会場も非常に広大で、それぞれ余裕のあるスペースが用意されていました。
大会ブースはこのイベントの魅力そのもので、多くの盛り上がりと共に様々な感動的な瞬間も。ジュニア部門では親子で参加し、勝利を喜ぶ姿にほっこりとしたり、国や国籍に関係なく、「今何位まで行ったの?」「おめでとう」などの交流が見受けられたりするなど、会場の至るところでファンが素敵な時間を共有しています。
この日、大会ブースで特に盛り上がっていたのが『ポケモンユナイト』でした。このゲームは、ポケモンを使った5対5のチーム戦が特徴のMOBAと呼ばれるジャンルであり、試合の進行が予測できない性質から、最後までドキドキ感が続きます。そのため、会場では選手と観客が一体となって緊張感を共有し、思わず漏れた声が次第に他の観客と合わさるというオフラインならではの楽しみが感じられます。自分たちが応援しているチームが勝利する瞬間には、会場内が大興奮でした。
◆子供の頃の夢が叶った!あの「サント・アンヌごう」に乗船できる「ポケモントレーナーズクルーズ」に感激。
ポケモンWCS以外にも会場の周辺では、WCS横浜みなとみらいイベントとして、たくさんのイベントが開催されていました。
そのなかのひとつ、「ポケモントレーナーズクルーズ」は、『ポケットモンスター 赤・緑』に登場するクチバシティの「ごうかきゃくせん」こと「サント・アンヌごう」まんまな見た目の「日本丸」船内で、『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』と『ポケモンカードゲーム』の対戦や交換ができるというもの。
あまりの再現度に、目と目があったらバトルをしかけられるのではないかとドキドキしました。
◆出店に盆踊りと、夏を満喫できるポケモン夏祭りパーク
横浜臨港パークでは、ポケモン夏祭りも同時開催。会場入口には『ポケットモンスター 金・銀』でお馴染みのセリフ「きみは いま! カントーちほう への だいいっぽを ふみだした!」のパロディもあります。
場内のBGMは、この時のためにアレンジされた歴代ポケットモンスターの楽曲であり、お祭り特有の雰囲気に心が和みました。
さらに広場中央には大きなやぐらが設置されており、ピカチュウ、ニャオハ、ホゲータ、クワッスと一緒に盆踊りをするイベントが観客を魅了します。4匹とも可愛くて、ずっと見ていたい!ただしこの日は非常に炎天下であったため、本来予定されていた時間よりも短めの時間で終了しました。
盆踊りはポケモン公式チャンネルでも公開されていますので、参加できなかった人はこれで少しでも雰囲気を味わえてもらえたら嬉しいです。
◆「500年、600年ポケモンを続けていきたい」株式会社ポケモン代表取締役の宇都宮氏が語る
イベント中、株式会社ポケモン代表取締役の宇都宮 崇人氏とThe Pokémon Company International ディレクター、グローバル eスポーツ&イベントプロデューサーのクリス・ブラウン氏へのメディア向け質疑応答タイムが設けられました。ここでは今回の大会開催までの経緯や、ポケットモンスターの今後について語られています。
――ポケモンWCSを日本で開催できたことについて一言ください。
宇都宮氏:まず私がはじめて参加したのがハワイで開催されたポケモンWCSでした。そこですごく衝撃を受けたんですよね。こんなに世界中からポケモンのイベントに人が集まっていて、さらに審判員もみんな多国籍言語で、こんなイベントがあるんだ!と思いました。いつかこのイベントを日本でも開催することができて、日本のお客さんに来てもらえたらみんなビックリするだろうなと思っていました。本当にいろんな大変なことを乗り越えて、チームのみんなが日本開催を実現してくれたことが今は本当に嬉しいですね。
クリス氏:日本で開催することは長い間検討していました。アメリカやヨーロッパから日本へこれだけ多くの人が参加してくれたことに驚いていますし、非常に嬉しく思っております。
――日本開催に伴って、なぜ横浜市を選んだのでしょうか?
宇都宮氏:ポケモンWCSは、これだけ多くの国から参加していただいているので、どこでも開催できるというわけではありません。ホテルだったり施設のキャパシティ、交通の便だったりを考えたら横浜は日本の中では非常に良いと考えたからです。またそれだけではなく「ピカチュウ大量発生チュウ!」などのイベントを何度も横浜市さんとやっていますし、ここであればイベントを成功に導けるんじゃないかと思い選びました。
――今回日本で開催するにあたって世界のポケモンファンに伝えたいメッセージはありますか?
宇都宮氏:今ぼくらの会社で「ポケモンで世界をひとつに」ということをグループミッションとして掲げています。それがひとつ達成できていることがポケモンWCSというふうに思っています。ポケモンを通じて、もちろん技を磨いて、腕を競ってナンバー1を決めるそういう勝負の側面もあるのですが、ただこういったものを通じて世界がポケモンを通じてひとつになればいいなと思っています。
――2023年のこのタイミングで世界大会が決まった理由と、もしまた日本での開催はあるとしたらどれくらいの期間があくのでしょうか?
宇都宮氏:ポケモンWCSはかなり前から準備が必要でして、1~2年というよりも本当にもう少し前から、慎重に色々手配したり議論したりして決めていくものなんですね。基本的にはポケモンWCSは海外を中心に広げてきているイベントですので、次にまた日本開催はいついつにできますとかはお伝えしにくいものとなっています。それくらい今回のイベントは私は貴重だと思っています。
――横浜の街全体がポケモンに染まっているといった光景をみてどのように思っていますか?
宇都宮氏:駅のホームを降り立って、改札を出て、駅を出てマンホールまでポケモンに埋め尽くされているのは、個人的にポケモンが大好きなのもありますが嬉しいなと感じています。あとは、開会式を見ていただいた方ならわかると思うのですが、海外の人が多く集まってくれました。こういったポケモンが世界中に愛されているっていう事が形になってくれて、それをまわりの日本の方々に見ていただけるということが非常に嬉しいです。こういった光景は横浜の街にもすごくマッチしているなとも思います。
――今回開催にあたって苦労した点はありますでしょうか?
宇都宮氏:普段海外で開催されているポケモンWCSのテイストをそのまま日本に持ち込んでいます。これは私達がすごく実現したいことのひとつでした。しかし、海外のプランナーやデザイナーが考えたことを日本で施工していくというのはとても難しく、考え方やカルチャーなど、そういったものを全てクリアしていかないと形にはなりません。
宇都宮氏:普段ゲームやカードを作っているときも、そういった事をクリアしながら世界中にお届けしているんですけど、それをイベントという形で日本で実現していくには、コミュニケーションだったり、日本と海外でそれぞれ一緒に協力してくれた会社さんとの違いによるギャップを埋めていくことなどあります。
宇都宮氏:また海外のお客さんと日本のお客さんの間でもイベントに求める期待値であったりだとか、少なくとも運営側にこういうことをやって欲しいというサービスレベルの水準も違うので、そういった事をひとつずつ埋め合わせるというプロセスを踏んで今日の開催までやってまいりました。これは株式会社ポケモンとして非常に学びのあるチャレンジングなことだったなと思います。
クリス氏:ポケモンWCSを開催するということ自体やはり大変なことではあるんですけど、500人くらいのスタッフがイベントに関わっていまして、ポケモンセンターだけでも600人います。それから横浜市のイベントスタッフも700人います。1,000人以上のスタッフでポケモンWCSを実現するということが非常にチャレンジングなことでした。さらに世界中のポケモンファンがこのイベントに参加するにはどうしたらいいのかなど、考えることもまたチャレンジングなことでした。
――お二人から選手に向けて何か一言ありますか?
宇都宮氏:先日韓国に行ったんですが、カードショップにパチリスのぬいぐるみが置いてあったんですね。このパチリスってワシントンDCの大会で韓国の選手のパク・セジュンという方が使用したことが有名で、非常に斬新な戦略を使って優勝したということでファンに印象を与えました。それ以降韓国ではパチリスは凄く人気のポケモンになったんです。選手の人達のアクションによってポケモンの人気が特定の国では変化するほどのインパクトを与えたいうことは過去に何度かあるんですね。選手の方はある意味ポケモンの歴史をつくっていく凄さがあります。ぜひ全力を尽くして頑張ってください!
クリス氏:選手のみなさんはまずは楽しんでいただきたいです!競技ということでコンペティティブな側面もありますが、是非この場を通して友達をつくったり交流ができたらと思っています。
――未来のポケモントレーナーにも一言ください!
宇都宮氏:自分たちはポケモンを500年、600年と人間の寿命を超えて世代を超えて残していきたい。そういう志でやっています。将来ポケモンというものを受け継いでくれるのは子供たちで、そしてその人たちが次の世代に受け継がないと、ポケモンって続いていかないのですが...こんなこと子供たちに話してもピンとこないかもしれませんが(笑)ただポケモンのいいところは子供たちが直感的に掴んでくれるところだと思っています。楽しんで、少しでも心に残ってくれたらいいなと思っています。
今回開催されたポケモンWCSは、株式会社ポケモンにとってもポケモンファンにとっても特別なイベントです。日本でこれだけ大規模なイベントを開催するために、どれだけの苦労があったことでしょう。それでも、代表の宇都宮氏が語ったようにポケモンが500年、600年と続く世界が実現するのならば、今我々が遊んでいる『ポケットモンスター』が“古代のパラドックスポケモン”になるわけで、そう考えるとなんだかワクワクしますね。
現地では国や国籍、年齢や性別を越えて様々な人が、ポケモンを通して交流していました。日本でもポケモンは大人気なコンテンツではありますが、こういったファンが対戦や交換を通して交流する機会はまだまだ限られています。そういった意味でも本当に貴重な体験ができたと、いちポケモンファンとして感慨深いものがありました。
国内での次回開催はしばらく先になるかとは思いますが、こういった機会は今後どんどん増えていってくれたら嬉しく思います。