2023年1月のアクティビジョン・ブリザードによるネットイースとの提携解消は、ネットイースによるBobby Kotick CEOへの「脅迫」が行われたと“誤解”したためである、と米メディア「New York Times」が報じています。
「New York Times」によれば昨年10月に行われたZoom会議にて、14年間続くパートナーシップと今後のライセンス更新をめぐる話し合いが行われましたが、ネットイース幹部が主張した“融和的”提案がブリザード幹部には“脅威”と感じられ、両社の緊張感がピークに達し、その1カ月後に協議は打ち切りに。既報の通り『World of Warcraft』『オーバーウォッチ』などの中国国内サービスは停止され、ネットイース社員が『World of Warcraft』の彫刻を破壊する様子を配信した件が話題となりました。
この会議について詳しい関係者と「New York Times」が入手した文書によると、両社は互いの発言内容に対して、まったく正反対の受け止め方をしているようです。
ネットイース側の視点に立つならば、中国政府は2021年、ゲーム産業の締め付けに乗り出したことでテンセントなど業界大手の株式時価総額が半減、新規タイトルの承認は厳しいものに。また青少年のゲーム中毒減少と政府が認めないコンテンツ排除も規制の目的に含まれており、中国ゲーム市場はここ数年で初めて縮小しました(※2023年に中国政府はオンラインゲームへの規制を緩和)。
欧米企業にとっては中国市場へのアクセスコストが上がり、国内企業にとっては恣意的な規制への恐れが大きくなっている中、ネットイースとしては中国政府が課す新しい法律を不安要素ととらえ長年の契約を変更したいと考えていました。具体的にはブリザードとの合弁事業を終了し、同社への直接ライセンス供与の希望です。そうなれば中国政府がもしも新たな規制を打ち出してきても、ブリザードの手を借りずにネットイースのみで規制に対応可能となるから、という言い分です。
ブリザード側は直接ライセンスの供与案は同社の知的財産に対する支配権が、ネットイースに強く委ねられることになるのを懸念しただけでなく、通訳を介して行われた会話の中でネットイースCEOであるWilliam Ding氏が、交渉の結果次第ではマイクロソフトのブリザード買収案を阻止するか支持するか否か、中国政府を動かせると脅してきたと感じたとのこと。この「脅迫」が、同社が中国市場からの撤退する一因となったと報じられた点に対し、ネットイース広報担当であるVoica氏は、William Ding氏がブリザードを脅したことを否定。むしろブリザードが“世界中の企業や規制当局への嫌がらせや愚弄”を続けていると述べています。
交渉内容に詳しい3人の関係者によるとブリザードはZoom会議ののち、約5億ドルを前払いするのであれば、ライセンス契約に切り替えると逆提案しましたが、この条件をネットイースが「商業的に非論理的」であると声明を発表。最終的に提携解消となり、冒頭の社員による彫刻破壊へとつながっていきました。
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